ここではステロイド骨粗鬆症に関してテーマを絞って解説します。骨粗鬆症一般に関してはこちらにまとめましたのでご参照ください。
1:機序
ステロイド骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症の原因として最も重要です。機序としてはステロイドによるRNAKL発現亢進・OPG発現減少による破骨細胞の成熟促進と、骨芽細胞・骨細胞のアポトーシス誘導により骨密度が低下します。
ステロイド骨粗鬆症ではまず海綿骨の骨密度が早期に低下し椎体圧迫骨折が起こり、それ以降に皮質骨に影響が出て大腿骨頸部骨折が起こるとされています。椎体圧迫骨折が他の骨折と比べて多いことが特徴的です(以下Osteoporos Int (2011) 22:809参照)。
2:検査
■FRAXの問題点
骨折のリスク評価としてFRAXが有用であることは骨粗鬆症のところで解説しましたが、ステロイド骨粗鬆症の評価では以下の問題があります。
・ステロイド骨粗鬆症はステロイドの使用量が増えると増加するが、ステロイドの投与量がFRAXでは反映されていない。
・ステロイド骨粗鬆症は特に椎体骨折が増加するが、FRAXは大腿骨頸部の骨密度を指標としている。
この前者の問題点を是正するために、ステロイド使用中の患者さんに対しては以下のFRAX補正式を用います(Osteoporos Int (2011) 22:809)。この使い方ですが、例えば60歳男性でFRAXでの10年以内骨折リスクが10%の場合、ステロイドをプレドニン換算7.5mg/日以上内服している場合は+25%になるので、12.5%になるということです。しかしこの式もより高容量のステロイド(例えば30mg/日)の場合のリスクは過小評価になっている可能性もあり注意が必要です。
■リスク評価
これらを踏まえた上でステロイド使用患者での骨折リスク評価は下記の通りになります(ACR2017年ガイドラインより作成)。
3:治療
0:ステロイドを少なくする
ついつい薬剤治療に目がいってしまいますが、とにかくステロイド投与量を少なくすることが重要です。ステロイドは中止すると、骨折リスクは急激に低下することが知られており(つまりステロイドを一度使うとずっと骨折リスクが高い訳ではない)、出来るだけステロイド投与量を少なく、投与期間を短くすることが重要です。
1:非薬剤治療
■食事・禁煙・飲酒量制限・運動・転倒予防策
これらが基本的に取り組む内容です。薬剤投与を考慮する前にまず介入したいです。
■カルシウム・ビタミンD摂取
目標:カルシウム:1000~1200mg/日・活性型ビタミンD製剤:600-800IU/日
ステロイド投与下ではCa尿中排泄が亢進しているため、重要です。ステロイド骨粗鬆症でのカルシウム補充、ビタミンD補充と骨折リスクの関係はまだ不明です。
2:薬剤治療
■薬剤治療の適応
ACRが2017年にステロイド骨粗鬆症のガイドラインを更新し、その内容に準拠して記載させていただきます。通常の骨粗鬆症治療の適応と違う点は下図赤字で囲った部分と、ステロイド高容量使用(40歳以未満は30mg/日以上、40歳以上はvery high dose GCs)が挙げられます。高リスク群の適応は通常の骨粗鬆症と同じですが、中リスク群も適応に含まれることとステロイド高容量も適応に含まれる点に注目です。
■薬剤の選択
ビスフォスフォネート製剤が第1選択で、抗RANKLモノクローナル抗体、副甲状腺ホルモン製剤は第2選択です(ビスフォスフォネート製剤が使用できない場合に考慮します)。SERMに関してはステロイド骨粗鬆症で骨折を減らすかどうかは不明で、第3選択になります。各薬剤の使用法・副作用などのまとめは骨粗鬆症のところで解説しましたので、こちらをご参照ください。
参考文献
・N Engl J Med 2018;379:2547:ステロイド骨粗鬆症のreview
・”2017 American College of Rheumatology Guideline for the Prevention and Treatment of Glucocorticoid-Induced Osteoporosis”:ACRの2017年に新しくなったステロイド骨粗鬆症のガイドラインです。
・Gノート「骨粗鬆症」