0:総合感冒薬とは何か?
いわゆる「風邪薬」としてテレビCMでも多く宣伝されている総合感冒薬ですが、その具体的な成分を皆さまご存知でしょうか?病院で処方することはありませんが、最もcommonなOTC(Over the counter:薬局で処方箋なしに購入することが出来る医薬品)として重要なのでまとめてみました。
基本的な配合成分は以下の4つです。
1:解熱目的:アセトアミノフェン or NSAIDs
2:鼻汁軽減目的:抗ヒスタミン薬(第1世代が多い)
3:鎮咳薬:リン酸コデイン
4:抗ヒスタミン薬の眠気防止目的:無水カフェイン
これらに+αで去痰薬、ビタミン剤、漢方薬、鼻粘膜充血をとる薬剤などが配合されています。これが総合感冒薬の基本的な成分です。
1:市販薬の比較
試しに有名な総合感冒薬の成分を比較します(写真は各社ホームページより参照させていただきました)。
みていただいて分かる通り各総合感冒薬間で違いはほとんどありません(!)これ以外にもビタミンや漢方薬、去痰薬などの配合の違いがありそれで違いを宣伝していますが、微々たる差であり臨床的に意義を持つかどうかは難しいです。
2:総合感冒薬で注意するべき点
・抗ヒスタミン薬は基本第1世代
抗ヒスタミン薬の章で話しましたが、基本的に第一世代抗ヒスタミン薬は中枢移行性が高いため眠気が起こりやすいことと、抗コリン作用が強いという難点があります。このため高齢者でのふらつきや前立腺肥大や緑内障患者で症状増悪する可能性があるため安易に使用することには注意が必要です。総合感冒薬での副作用の大多数がこの抗ヒスタミン薬の抗コリン作用によるものです(風邪薬を飲んだら尿閉になってしまった・・・・など)。
そもそも急性上気道炎での鼻汁に抗ヒスタミン薬はevidenceはありません(アレルギー性鼻炎に対しては第1選択です)。効果があるかどうかわからないのに、副作用だけあるという点が悩ましい点です。
・NSAIDsが配合されている場合
アセトアミノフェンは副作用が少なく安全ですが、NSAIDs(特にイブプロフェンが多い)が配合されている総合感冒薬も複数あります。腎機能障害、AERD(いわゆるアスピリン喘息)、胃潰瘍患者などではやはりこれらの薬剤はリスクになるため注意が必要です。急性上気道炎に対してNSAIDsをわざわざ使わなくともアセトアミノフェンで十分なため、これも注意です。
・リン酸コデイン
鎮咳薬も基本的に急性咳嗽にはevidenceがないことと(実臨床でも鎮咳薬なかなか効かないことが多いですよね?)、リン酸コデインは喘息発作やCOPD急性増悪では禁忌になることから注意が必要です。
このように考えると急性上気道炎で使用するのはアセトアミノフェンで十分であり、その他の薬剤は効果に乏しく(リスクもあり)基本的に必要ないことがわかると思います。すると、総合感冒薬は積極的には使用しないことが望ましいと思います(私は家族には使用しないように話しています・・・)。
普段医師はOTCのことを考える機会がなかなかないので改めてまとめてみました。ご参考いただけますと幸いです。