抗血小板薬総論に関してはこちらをご参照ください。クロピドグレルはプロドラッグであり,CYP2C19で代謝され活性型になります。ここで問題となるのが「PPIがCYP2C19を阻害してしまうとクロピドグレルの薬効に影響がでてしまう」点です。調べた内容をまとめていきます。
薬理学的側面
健常者における活性型代謝産物の血漿濃度阻害効果:オメプラゾール>エソメプラゾール>ランソプラゾール>dexlansoprazole *この文献ではラベプラゾールに関して検討していない J Am Coll Cardiol 2012;59:1304–11
臨床的アウトカムへの影響
COGENT試験 (Clopidogrel and the Optimization of Gastrointestinal Events Trial)
・ACSでPCIを受けた患者のクロピドグレル+PPI(オメプラゾール) vs クロピドグレル単剤(PPI併用なし)のRCT *PPI同士の比較ではない点に注意
・CVイベントの複合エンドポイント(MI、脳卒中、CABG、PCI、CV死)において、両群間に有意差なし(HR: 0.99; 95% CI: 0.68 to 1.44)
・LimitationはEarly terminationになりCVイベントが少なかった
・消化管出血はPPI併用群で有意に低下(HR: 0.34; 95% CI: 0.18 to 0.63)
“A network meta-analysis: evaluating the efficacy and safety of concurrent proton pump inhibitors and clopidogrel therapy in post-PCI patients” Front Cardiovasc Med. 2024 Jul 24;11:1385318.
・デザイン:systematic review/network meta-analysis
・患者:PCI後にクロピドグレルを使用している患者(合計16件の研究、145,999人)
・対象:クロピドグレル単独群とクロピドグレル+PPI併用群
・結果:MACEs, 消化管出血の違いに関して
・ラベプラゾールがPPIの中でMACEs有意に増加ない結果,非酵素の代謝経路が関与している可能性がある
| PPIの種類 | MACEs | 消化管出血 |
|---|---|---|
| ランソプラゾール (Lansoprazole) | 効果量:1.48 (95% CI: 1.22–1.80)。有意に増加(最も高いリスク増加と関連)。 | 効果量:0.74 (95% CI: 0.24–2.26)。有意な減少は示さなかった。 |
| パントプラゾール (Pantoprazole) | 効果量:1.38 (95% CI: 1.18–1.60)。有意に増加。 | 効果量:0.33 (95% CI: 0.13–0.84)。有意に減少。 |
| エソメプラゾール (Esomeprazole) | 効果量:1.28 (95% CI: 1.09–1.51)。有意に増加。 | 効果量:0.30 (95% CI: 0.09–0.94)。有意に減少。 |
| オメプラゾール (Omeprazole) | 効果量:1.23 (95% CI: 1.07–1.43)。有意に増加。 | 効果量:0.34 (95% CI: 0.14–0.81)。有意に減少。 |
| ラベプラゾール (Rabeprazole) | 効果量:1.05 (95% CI: 0.66–1.66)。有意な増加は示さなかった(最も低いMACEリスク増加)。 | 効果量:0.36 (95% CI: 0.10–1.25)。有意な減少は示さなかった。 |
その他の観察研究では結果はさまざま
⇒この結果を含めてPPIにはラベプラゾール併用を推奨している文献あり “Cardiovascular Compatibility of Proton Pump Inhibitors: Practice Recommendations” Cardiol Ther. 2023 Dec;12(4):557-570.
まとめ
・薬理学的にはPPIの種類によりクロピドグレルの代謝に差があることがわかっているが,臨床的アウトカムは前向き研究では証明されていない
・ラベプラゾールがMACEの有意な増加を示さなかったsystematic reviewがあり、クロピドグレルにPPIを併用する場合ラベプラゾールが安全かもしれない