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2020年

PPMS: primary-progressive multiple sclerosis 1次性進行型多発性硬化症

先日外来で5年経過の緩徐進行性歩行障害を呈し神経学的所見上では痙性が目立つ症例があり、比較的高齢だけれど遺伝性痙性対麻痺かな?と思い精査した結果”PPMS”であった症例がありました。やはりPPMSは日常臨床でそこまで頻度が多いものではないですが、調べた内容をまとめます。 臨床像 PPMSはMSの病型のうちの1つ(RRMS, SPMS, PPMS)であり、MS全体の約10-1 […]

遺伝性痙性対麻痺 HSP: hereditary spastic paraplegia

病態・定義 遺伝性痙性対麻痺は臨床上は緩徐進行性の下肢痙縮と筋力低下を認め、病理学的には脊髄の錐体路、後索、脊髄小脳路の変性を認める神経変性疾患です。多くは常染色体優性遺伝で、一部常染色体劣性遺伝などが存在し、SPG〇〇と遺伝子に番号がふられています。細胞内輸送の障害(小胞体など)が病態の主体とされていますが、なぜそれが痙性対麻痺の臨床像を呈するのかはまだ解明されていません。 臨床的には痙性対麻痺 […]

脳血管障害と不随意運動

脳血管障害は続発性のmovement disordersのうち22%を占め、また脳卒中側からみると脳卒中全体の1-4%にmovement disorders(パーキンソニズムやchorea, ballism, athetosis, dystonia, tremor, myoclonus, stereotypies, akathisia)を合併するとされています(Lancet Neurol 2013 […]

髄液オリゴクローナルバンド(OCB)って何ですか?

髄液中で抗体が産生されているかどうか? 「IgG indexとは何か?」という記事で解説した内容と一部重複してしまいますが、改めて解説させていただきます(IgG indexの記事はこちらをご参照ください)。 中枢神経で自己免疫機序の病態があると、中枢神経で自己抗体が産生されます(例えば多発性硬化症や自己免疫性脳炎など)。もちろん具体的な抗NMDA受容体抗体など抗体がわかっていればそれを測定すれば良 […]

抗MAG抗体ニューロパチー

病態 異常蛋白血症に伴うニューロパチーの中に含まれます(異常蛋白血症に伴うニューロパチーに関してはこちらを参照ください)。IgM praproteinemiaに伴うニューロパチーのうち約50%で抗MAG(myelin associated glycoprotein:ミエリン随伴性糖蛋白質)抗体が陽性となります。MAGは髄鞘間の接着因子として機能している髄鞘構成蛋白で、下図の赤矢印部分をご参照くださ […]

RIS: radiologically isolated syndrome

RIS(radiologically isolated syndrome)は多発性硬化症らしい白質病変を認めますが、明らかな神経学的な所見や病歴を認めず、またその他のetiologyも特定できない状態をさす表現です。頭痛やめまいの精査目的に頭部MRI検査を実施し偶発的に指摘される機会も増えてきていると思います。2009年にRISという言葉が導入されてからの変遷をまとめます。 定義 ■RISの提唱( […]

G群連鎖球菌 GGS: Group G Streptococcus

先日救急外来で熱源不明で入院となった患者さんの血液培養が4/4本からG群連鎖球菌(以下GGSと略記します)が検出されました。GGSは血液培養からたびたび検出されることがある菌ですが、きちんと調べられていなかったので調べた内容をまとめさせていただきます。 分類 溶血性は「β溶血性」、Lancefield分類ではGに分類され、一般的にはG群連鎖球菌(Group G Streptococcus)と表現さ […]

巨細胞性動脈炎と脳血管障害

巨細胞性動脈炎(GCA: giant cell arteritis)は主にlarge size vesselを障害する血管炎です。先日巨細胞性動脈炎が背景にある患者さんが脳梗塞で入院となり、今まで経験がなかったため既報を調べてみました。 機序 頭蓋内の血管と頭蓋外の血管の違いとして、病理的に頭蓋内の血管は頭蓋外の血管と比較して中膜、外膜の弾性繊維に乏しく、栄養血管であるvasa vasorumを欠 […]

肺炎 Pneumonia

「肺炎」は実臨床でよく遭遇しますが、なんでもかんでも「肺炎」とくくってしまうと適切な診断や治療に結びつかない場合も多々あります。ここであらためて「肺炎」へのアプローチを考えてみます。以下では主に「細菌性」の肺炎を扱います。 病歴 ・まず問診上重要なことは「上気道症状」と「下気道症状」をきちんと分けて問診することです。上気道症状が主体であればもちろん上気道炎らしさが上がるし、下気道症状が主体であれば […]

免疫不全と感染症

免疫不全の分類 免疫不全をただ漠然と「免疫不全」とくくってしまうのではなく、具体的に免疫機序のどの部分が障害されているか?により大きく「好中球減少」・「細胞性免疫不全」・「液性免疫不全」の3通りに分類するとアプローチがしやすくなると思います。以下に免疫不全と対応する病原体の関係をまとめた図を掲載します。 好中球減少 ・好中球減少をきたす原因の代表は白血病、またその治療である骨髄移植です。・原因病原 […]