注目キーワード
CATEGORY

神経症候・解剖

舌下神経 hypoglossal nerve

発生と機能 いきなり衝撃的な事を書きます。舌下神経は12番目の脳神経と学生時代に解剖の授業で習いますが、発生学の教科書を読むと「舌下神経は頭蓋内に閉じ込められた脊髄神経である」(参考:ケント 脊椎動物の比較解剖学)と記載があり厳密には脳神経に分類されないことが書かれています。この根拠として発生学的に舌は鰓下筋であり、カエルやカメレオンの両生類や爬虫類は舌で獲物を捕らえる(手と同じ動きを担う)点で脊 […]

頸動脈の聴診

頸動脈の聴診は特に神経内科医にとっては基本的な一般身体所見です。もしかしたら色々な流派があるかもしれないので、あくまで参考にしてください。 ポイント1:基本的に聴診器のベル型を使用する ・血管雑音の聴取で注意しないといけない点は、聴診器を強く押し当てすぎてはいけないということです。聴診器を血管に対して強く押し当てると血管狭窄が存在しなくても乱流や狭窄を生んでしまうことで血管雑音を聴取してしまう場合 […]

Kluver-Bucy syndrome クリューバー・ビューシー症候群

単純ヘルペス脳炎の患者さんで議論になったテーマです。Heinrich Kluver先生とPaul Bucy先生が1939年に発表したことに端を発します。ここではAuroraと名付けられたサルに対して両側側頭葉切除術が行われた後の様子を観察して記述されました。 人間での報告は1955年にTerzian先生とOre先生が19歳男性でてんかんコントロールのために両側側頭葉切除術を実施された患者さの報告に […]

脳梁病変

脳梁の解剖 ・脳梁(のうりょう: corpus callosum)は左右大脳半球を連絡する最大(約2億本)の繊維束(白質)です。その他左右の大脳半球を連絡する交通線維は前交連、海馬交連が存在します。 ・膨大部:PCAからの血流支配・膨大部以外:ACAからの血流支配 脳梁障害による神経症候 ■左半球機能の伝導障害:言語処理を左半球で行う際に右半球からの情報が脳梁障害により左半球に伝達されないと生じる […]

limb-shaking TIA

極めてまれだけれど知らないと診断できず、注意が必要な不随意運動の鑑別としてlimb-shaking TIAがあります。高度内頚動脈狭窄(または閉塞)を背景として対側の四肢に不随意運動を認める症候です。1962年にMiller Fisher先生が症例報告したことに端を発し(CMAJ 1962;86:1091–1099.)、現在は教科書にも載っているくらい有名な症候ではありますが実際臨床現場で出会うこ […]

ataxic hemiparesis

先日右下肢に強い失調の患者さんが受診され、構音障害や注視誘発性眼振などがなく、「うーん絶対小脳性の失調なんだけどな・・・その他の支持する所見が弱いな・・・」と思った症例が左内包後脚の梗塞による”ataxic hemiparesis”でした。この例から分かるように個人的には「片側上下肢の失調を認め、脳神経領域で小脳失調を示唆する所見(構音障害や注視誘発性眼振)を認めない場合」 […]

神経障害性疼痛

いわゆる「しびれ」(異常感覚)に対してスパッと効果のある薬剤はなかなか無いのが現状ですが、実際にはその中でも試行錯誤しながら対症療法を進めていきます。ただいずれの薬剤も副作用(とくにふらくきや眠気など)があり、高齢者では転倒のリスクになってしまったりと本末転倒な結果を招きかねないため慎重に使用する必要があります。 プレガバリン 商品名:リリカ作用機序:Ca2+チャネルα2δリガンド製剤:25mg, […]

Painful tonic spasm

ちょっとマニアックなテーマで恐縮ですが、脊髄疾患の診療でしばしば悩まされるのが”painful tonic spasm”(PTSとも略されます)です。私も医師3年目の時にNMOSD(抗AQP4抗体+)の患者さんで同症状を呈して管理にかなり難渋してしまい患者さんに辛い思いをさせてしまった苦い経験があります・・・。疼痛の恐怖のため外出をあまりしなくなってしまう方もいらっしゃり、 […]

本態性振戦 ET: essential tremor

本態性振戦は日常臨床でよく遭遇しますが、「原因のわからない振戦」のごみ箱診断名にならないように注意が必要です。正直初診時は他疾患かどうかわからない場合も多いためフォローでの経過がやはり一番重要なのかと思います(一度カルテに本態性振戦と診断名を記載してしまうとどうしても思考停止してしまうことがあり反省です)。振戦全般の鑑別に関してはこちらにまとめがあるのでご参照ください。 臨床像 ・左右対称性:片側 […]

RPD: rapidly progressive dementia 急性進行性認知症

Michael D. Geschwind先生が提唱した概念が“RPD: rapidly progressive dementia”という概念です。ここまでわかりやすく臨床的にまとめられた論文はなかなかなく(Ann Neurol 2008;64:97–108)、個人的に読んで感動した論文上位にくる論文です。ここで取り上げられていた鑑別診断と検査をまとめます(一部自分の経験も含 […]