MMTを測定していて、足関節底屈のところだけ MMT5、それ以外が4というカルテ記載をしばしばみかけます。これは注意が必要で、足関節底屈のMMTは筋力の強さ、てこの原理などから過大評価になりやすいです。
足関節底屈のMMTの問題点
・MMTは筋力を過大評価する傾向がある:非常に強力な筋肉(抗重力筋)であるため徒手筋力テストでは実際には筋力低下があったとしても検者の力でわからず、正常と判断してしまう可能性がある(ceiling effect)
・テコの原理で足首は短いので力学的に不利に働く要素もある
・そもそもMMTは高い筋力グレードでは感度が低く、軽度の筋力低下を検出することが困難
single-leg heel raise (SLHR) test
・方法:片脚でつま先立ちを繰り返す 壁に向かって立ち、バランスをとるために壁に軽く指を添える 片脚立ちになり膝を伸展位にして踵をできるだけ高く上げる
・Daniels-Worthingham法などのMMTではこの反復回数を筋力グレードの判定基準として用いている
→一般的に20〜25回以上連続で完了できることが「正常」な底屈筋力の基準とされている
・有用性:歩行機能や機能的なパフォーマンスの評価としては有用
・問題点:実施できる「回数」と足関節底屈筋の最大等尺性収縮力(MVC)との間には相関関係なし
→回数は純粋な筋力よりも持久力など別な要素を反映している可能性がある 回数で筋力のgradeを判断することは適切ではない可能性がある
・1回できるか?(1回もできないか?)は最大等尺性筋力を反映するか?
→1回実施するためには閾値となる一定以上の筋力が必要 *足関節底屈筋力が体重13%以下まで低下している場合は誰も完遂できず
→重度な筋力低下のスクリーニングとして有用である(機能的な動作を行うための最低限の筋力(閾値)が保たれているか)
研究の紹介
下肢の主要な筋群のMMTと定量的筋力測定を比較しMMTの正確性を検討した研究 A Comparative Study of Isokinetic Dynamometry and Manual Muscle Testing of Ankle Dorsal and Plantar Flexors and Knee Extensors and Flexors Eur Neurol 1997;37:239-242
・対象患者: 神経障害を有する患者108名(糖尿病患者86名、アルコール性肝硬変患者22名)
・結果:足関節底屈筋で最も合致しない 誤分類:足関節底屈 41%, 膝関節伸展 30%, 膝関節屈曲 29%, 足関節背屈 28%
・足関節底屈筋において、実際には健常予測値の約35%(3分の1程度)まで筋力が低下している患者であっても、MMTでは「正常」と誤判定されてしまう
・足関節底屈筋や膝関節伸展筋のような非常に強力な筋群は、検者の筋力不足や力学的な不利が原因で、患者の力をブレイク(抵抗に打ち勝つ)できないため、評価精度が著しく低下
・結論:末梢神経障害患者の下肢筋力評価において、MMTは筋力低下の頻度および重症度を大幅に過小評価し、特に足関節底屈筋においてはその傾向が最も強く現れる
Are Repeated Single-Limb Heel Raises and Manual Muscle Testing Associated With Peak Plantar-Flexor Force in People With Inclusion Body Myositis?
・対象者: 散発性封入体筋炎(IBM)と確定診断された成人患者43名
・SLHRを1回以上正しく実施できるグループと1回もできないグループの2群に分類
・3つの方法で検討:①最大等尺性収縮(MVC)、②MMT(Kendall法 ブレイクテスト)とDaniels-Worthingham法, grade3以上はSLHRの回数を使用して評価)、③SLHR testの反復回数
・結果
1:Kendall MMTの天井効果 著しい筋力低下があるにもかかわらず、約80%の患者で手動のブレイクテストが陰性 Kendall法はSLHRができる群とできない群を識別できない
2:SLHRの回数とMVCは関連しない
3:1回できるかどうかが閾値になる MVC(体重比)13%以下は1人もSLHRを1回もできなかった
・考察と結論
1:足関節底屈筋力の著しい筋力低下があるがMMT上は最高スコアをとることがあるので危険である(MMTは妥当性が低い)
2:SLHRの回数は最大筋力よりも持久力を反映しているので回数をGradeに組み込むことは疑問がある
3:SLHRが1回できるか?できないか?がスクリーニングとして有用である