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NMOSDとシェーグレン症候群の合併

NMOSD総論についてはこちらをご覧ください。以下はNotebook LMの力を借りています。

遺伝子レベルでの議論

1. 研究の背景と目的

AQP4陽性NMOSDの遺伝的背景については、患者数が少ないためこれまで大規模な研究が困難でした。過去のGWAS研究はわずか132名の患者で行われたものであり、多発性硬化症(患者47,000名規模のGWASが存在)と比べて圧倒的にデータが不足していました。 そこで本研究は、「国際NMOSD遺伝学コンソーシアム」を設立して世界36の施設からサンプルを収集し、**これまでで最大規模となる「全祖先(パン・アンセストリー)GWAS」**を実施しました。目的は、AQP4陽性NMOSDの遺伝的構造を解明し、他の自己免疫疾患との遺伝的なつながりを探索することです。

2. 研究規模と対象

  • 対象者: 品質管理後のデータとして、AQP4陽性NMOSD患者1,573名と、対照者1,260名の遺伝子データを解析しました。
  • 人種の多様性: 白人(ヨーロッパ系)だけでなく、アジア人、黒人、ヒスパニックなど多様な人種が含まれています。
  • また、十分なサンプル数が確保できたヨーロッパ系(患者803名、対照1,054名)に限定したサブ解析も行われました。

3. 主要な発見:3つの強力な遺伝的リスク因子

解析の結果、ゲノムワイドレベルで有意(極めて強い関連)とされる**3つの独立した遺伝的リスクバリアント(一塩基多型:SNP)**が特定されました。

① 補体「C4A」に関連するバリアント(最大の遺伝的リスク)

  • 場所: 第6染色体のMHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスIII領域。
  • トップSNP: rs1150753(ヨーロッパ系ではrs1270942)。
  • 機能と影響: この遺伝子変異は、血清中の「補体C4」の発現量(コピー数)の低下に強く関連しています。補体C4は、自己反応性(自分の体を攻撃してしまう)B細胞を排除し、末梢での免疫寛容(免疫のブレーキ)を維持するために重要です。C4が低下することで、自己反応性B細胞が生き残り、AQP4自己抗体を産生しやすくなると考えられます。

② 「HLA-DRB1」に関連するバリアント

  • 場所: 第6染色体のMHCクラスII領域。
  • トップSNP: rs607929
  • 機能と影響: ヨーロッパ系の詳細な解析により、このリスクは特定のHLA型である**「HLA-DRB1*03:01」**と強く結びついていることが判明しました。HLAは免疫細胞(T細胞)に抗原を提示する役割を持ちますが、この特定の型(特にアミノ酸の74位アルギニンと77位アスパラギンの構造)を持つことで、自己反応性のCD4+ T細胞が活性化されやすくなり、それが自己抗体を作るB細胞を助けてしまう(T細胞の免疫寛容の破綻)ことが示唆されています。

③ 「STAT4」遺伝子に関連するバリアント(MHC領域外のリスク)

  • 場所: 第2染色体にあるSTAT4遺伝子のイントロン領域。
  • トップSNP: rs35593987(ヨーロッパ系ではrs3821236)。
  • 機能と影響: この変異は、STAT4遺伝子の発現を増加させます。STAT4は、B細胞を強力な自己抗体産生細胞へと変化させるのを助ける「濾胞ヘルパーT細胞(Tfh)」の働きを決定づける重要な因子です。STAT4の過剰な働きが、AQP4自己抗体の産生を促進していると考えられます。

4. 多発性硬化症(MS)との明確な違いと、他の自己免疫疾患との共有

本研究の最も興味深い結論の一つは、遺伝的な背景から見た「疾患のグループ分け」です。

  • MSとの違い: AQP4陽性NMOSDは、視神経炎や脊髄炎といった臨床症状こそ多発性硬化症(MS)と似ていますが、遺伝的なリスク因子はMSと全く共有していませんでした(遺伝的相関は認められず)。
  • 全身性自己免疫疾患との強い類似性: 一方で、AQP4陽性NMOSDの遺伝的リスク(特にC4AとSTAT4のバリアント)は、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、重症筋無力症、サルコイドーシス、筋炎といった他の自己免疫疾患と強く共有されていることが判明しました。
  • これは、NMOSD患者がなぜSLEやシェーグレン症候群などを合併しやすいのか(本研究の患者コホートでも約40%が他の自己免疫疾患を合併)を、遺伝子レベルで見事に説明するものです。

5. 病態メカニズムの新たな仮説と、将来の治療標的

これらの遺伝的発見を総合し、著者らはAQP4陽性NMOSDの発症メカニズムについて以下の仮説を立てています。

  1. 補体C4の低下により、自己を攻撃するB細胞の排除に失敗する(B細胞の異常)。
  2. 特定のHLA型(HLA-DRB1*03:01)により、自己反応性T細胞が活性化する(T細胞の異常)。
  3. STAT4経路の活性化により、T細胞がB細胞を過剰に助け、AQP4自己抗体が大量に作られる(自己抗体の産生)。

【新しい治療への展望:TYK2-STAT4経路】 現在、TYK2(STAT4の上流にあるシグナル伝達物質)の働きを抑える「TYK2阻害剤」が、乾癬性関節炎などの他の自己免疫疾患で有効性を示しています。本研究では、TYK2の特定のバリアント(P1104A)を持つ人はNMOSDに対して保護的に働く(発症しにくい)ことも確認されました。 このことから、遺伝的にリスクを共有する**「TYK2-STAT4経路」を標的とした治療薬が、AQP4陽性NMOSDの新たな治療の選択肢となる可能性**が強く提案されています。

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まとめ このGWAS論文は、AQP4陽性NMOSDが「脳や脊髄の局所的な病気(MSの親戚)」というよりも、遺伝的根底においては**「B細胞とT細胞の免疫寛容が破綻して起こる、SLEやシェーグレン症候群の仲間に近い『全身性の自己免疫疾患』である」**ことを証明した画期的なマイルストーンと言えます

AQP4+NMOSDとシェーグレン症候群合併例のまとめ

“Overlap syndrome of anti‐aquaporin 4 positive neuromyelitis optica spectrum disorder and primary Sjögren’s syndrome: a systematic review of individual patient data” Rheumatology International 2024; 44: 2807–2815.

1. 研究の背景と目的

pSS(シェーグレン症候群)患者における中枢神経の障害は、共存するNMOSDが原因で引き起こされることがあります。AQP4陽性NMOSDは再発率が非常に高く、早期に診断して継続的な免疫抑制療法を行わなければ、永久的な障害が残る恐れがあります。しかし、この2つの病気の合併(オーバーラップ)について臨床経過や治療結果を体系的に調査した研究はこれまでありませんでした。 そこで本研究は、過去の症例報告などを集め、pSSとAQP4陽性NMOSDの両方の基準を満たす患者のデータを統合・分析し、その全体像を明らかにすることを目的としました。

2. 対象患者の概要

文献のスクリーニングにより、最終的に44名の患者データが解析に組み込まれました。

  • 性別と発症年齢:44名中41名(93.2%)が女性でした。pSSの発症年齢の平均は44.8歳、NMOSDの発症年齢の平均は43.2歳でした。

3. 主な研究結果(臨床的特徴と検査所見)

① 発症のタイミング(どちらが先か) 非常に重要な点として、約半数の患者(20名、45.5%)で、NMOSDの神経症状がpSSの診断よりも「先」に出現していました。NMOSDの発症からpSSと診断されるまでの期間の中央値は3.5年でした。pSSが先行した患者は13名(29.5%)、同時発症は11名(25%)でした。

② 主な症状

  • pSSの症状:口の渇き(口腔乾燥)が63.6%、目の渇き(ドライアイ)が50%の患者で認められました。
  • NMOSDの症状:急性横断性脊髄炎が最も多く(70.5%)、次いで視神経炎(47.7%)、大脳症候群(31.8%)の順でした。

③ MRIと検査所見の特徴

  • MRI画像:脊髄MRIでは、32名(72.7%)でNMOSDに特徴的な「長大脊髄病変(LETM)」が確認されました。
  • 血液検査:全員(100%)が抗SSA(Ro)抗体陽性であり、61.4%が抗SSB(La)抗体陽性でした。また、50%の患者で「低補体血症」がみられました。
  • 髄液検査:細胞数が増加していた患者のうち、92.3%が「リンパ球優位」でした。一般的なNMOSDでは好中球が優位になることが多いですが、リンパ球優位の所見はpSSの合併を示唆する特徴であると考察されています。

4. 治療と予後(アウトカム)

  • 急性期治療:神経障害の急性発作に対して、90.9%がステロイドパルス療法(静脈内メチルプレドニゾロン)、34.1%が血漿交換療法(PLEX)、22.7%が静脈内免疫グロブリン療法(IVIG)を受けました。
  • 維持療法(再発予防):再発を防ぐための免疫抑制剤として、シクロホスファミド(36.4%)、アザチオプリン(36.4%)、ミコフェノール酸モフェチル(22.7%)、リツキシマブ(13.6%)などが使用されました。
  • 病気の経過:経過が追えた患者のうち、**61.4%が「再発性」**であり、再発せずに済んだ(単相性)患者はわずか4.5%でした。
  • 最終的な状態:追跡調査期間中(中央値2.4年)、88.6%の患者で症状の改善がみられましたが、一部の患者は悪化や死亡(呼吸不全など)に至りました。
  • 5. 論文のまとめと教訓
  • このオーバーラップ症候群の最大の特徴は、pSSの自覚症状が出るより何年も前に、NMOSDによる重篤な神経症状(脊髄炎や視神経炎)が先行するケースが多いということです。 論文では、pSS患者に新たな神経症状が出た場合はNMOSDの合併(AQP4抗体の検査)を強く疑うべきであること、そしてNMOSDの経過は高い確率で「再発性」となるため、無期限の強力な免疫抑制療法(B細胞を標的とするリツキシマブなどが有効とされる)が必要であることが強調されています。

AQP4+NMOSDとシェーグレン症候群合併有無による臨床像の違い

“Impact of comorbid Sjögren syndrome in anti‐aquaporin‐4 antibody‐positive neuromyelitis optica spectrum disorders” Journal of Neurology 2021; 268: 1938–1944.

・神経症状から抗AQP4抗体が測定された4447名のデータを解析し、シェーグレン症候群(SjS)の合併率、およびその合併が臨床経過に与える影響を検討した文献
・抗体陽性例と陰性例の違い
 自己抗体: 抗SSA/Ro抗体(26.3% vs 4.5%)、抗SSB/La抗体(7.2% vs 1.2%)
 症状: ドライアイ(9.1% vs 4.9%)、ドライマウス(8.9% vs 3.7%)
 SjS合併の疑い: 9.2% vs 1.5%
・逆にシェーグレン症候群に脊髄炎や視神経炎を合併する場合は80%以上が抗AQP4抗体陽性

*ここでのシェーグレン症候群の診断は抗体と自覚症状のみでLip biopsyの結果などは含んでいない点に注意が必要。

・抗AQP4抗体陽性者におけるシェーグレン症候群合併の有無による

比較項目SjS合併例 (105名)SjS非合併例 (1,034名)違い・結果(統計的有意差)
女性の割合97.1%89.0%合併例で有意に高い(p=0.0062)。
髄液OCB(オリゴクローナルバンド)陽性率15.4%7.5%合併例で有意に高い(p=0.0293)。
再発頻度(発作回数)(罹病期間5〜20年で増加)初期は差がないが、罹病期間が5年を超えると合併例で有意に増加する(p=0.0270)。
急性期の重症度 (EDSSスコア)5.0(中央値)5.0(中央値)有意差なし。
発症年齢47.7歳(平均)46.3歳(平均)有意差なし。
脳病変の有無38.1%26.6%有意差なし。
脳幹病変の有無38.1%43.3%有意差なし。

病態生理についての考察
・エストロゲンの低下や体液変動といった共通のトリガーによって異常な免疫反応が始まり、それが「異所性リンパ組織の形成」という共通のシステムによって標的臓器(SjSでは外分泌腺、NMOSDでは中枢神経)で持続・増幅されるという、根底にある免疫異常のプロセスを共有している可能性が高いと考察されている

NMOSDでは自覚症状がなくとも病理学的に唾液腺の障害を高率に合併している

“Minor salivary gland inflammation in Devic’s disease and longitudinally extensive myelitis” Multiple Sclerosis 2008; 14: 809–814

提示された文献(Javed et al., 2008)は、視神経脊髄炎(Devic病、現在のNMOSD)および長大脊髄病変を伴う横断性脊髄炎(LETM)の患者において、シェーグレン症候群(SjS)の初期病変である「小唾液腺の炎症」がどの程度見られるかを調査した研究です。

この論文の背景、結果、考察について詳細にまとめます。

1. 研究の背景と目的

視神経脊髄炎(NMO)は多発性硬化症(MS)とは異なり、SjSなどの結合組織疾患を頻繁に合併することが知られています。しかし、初期のSjSでは、ドライアイやドライマウスなどの自覚症状がないことや、血液検査での自己抗体(抗SSA/B抗体)が陰性であることも多く、従来の基準ではSjSの合併を見逃している可能性が指摘されていました。 そこで本研究は、客観的でより感度が高いとされる**「口唇の小唾液腺生検(組織の一部を採取して調べる検査)」**を用いて、NMOおよびLETM患者における唾液腺の炎症の実際の頻度を明らかにすることを目的としました。

2. 対象と方法

2004年から2007年に横断性脊髄炎を呈した成人患者25名(NMO患者16名、LETM患者9名)を対象としました。患者には自覚症状の問診や抗SSA/B抗体などの血液検査を行い、同意が得られた患者に対して口唇の小唾液腺生検を実施し、顕微鏡下でリンパ球(免疫細胞)の浸潤による炎症の程度を評価しました。

3. 主な結果

① 従来の診断基準では「ごくわずか」 問診や血液検査などを用いた国際的なSjSの診断基準を完全に満たした患者は、25名中わずか4名(16%)にすぎませんでした。

② 生検では「驚くほど高頻度に炎症を確認」 一方、小唾液腺生検を実施したところ、NMO患者の75%(9/12名)、LETM患者の87.5%(7/8名)において、SjSに特有の「重度のリンパ球浸潤(グレード3または4)」が確認されました。全体として、生検を実施した患者の80%(16/20名)に明らかな唾液腺の炎症が見られました。

③ 血液検査(抗体検査)との大きな乖離 生検で重度な炎症が確認された15名のうち、血液検査で抗SSA/B抗体が陽性だったのはわずか4名(27%)でした。つまり、血液検査だけに頼っていると、唾液腺で実際に起きている強い炎症を見逃してしまうことが明らかになりました。

4. 考察と病態メカニズム

① 潜在的なシェーグレン症候群の存在 この結果は、NMOやLETMの患者の多くが、自覚症状や血液検査の異常が出る前から、すでに唾液腺に自己免疫性の炎症(潜在的なSjS)を起こしていることを示しています。中枢神経の病気と考えられていたNMOが、実は末梢臓器(唾液腺)にも広く影響を及ぼしていることを裏付ける結果です。

② アクアポリンを通じた「交差反応」の可能性 論文では、中枢神経と唾液腺の両方で同時に炎症が起きるメカニズムとして、「アクアポリン(AQP)」の類似性が考察されています。 NMOの主要な攻撃ターゲットは中枢神経に多く存在する水チャネルタンパク質「アクアポリン4(AQP4)」ですが、唾液腺には唾液の分泌に重要な「アクアポリン5(AQP5)」が多く存在しています。このAQP4とAQP5は、タンパク質のアミノ酸配列が約50%一致しています。 そのため、患者の体内にある自己反応性の免疫細胞が、中枢神経のAQP4と唾液腺のAQP5の似ている部分を「誤って両方とも攻撃してしまう」ことで、中枢神経の病気(NMO)と唾液腺の病気(SjS)が同時に引き起こされている可能性が高いと推測されています。

まとめ

本研究は、NMOおよびLETM患者において、高い確率で唾液腺の自己免疫性炎症が併発していることを組織学的に証明しました。また、両疾患の密接な関連の背後に「AQP4とAQP5の構造的な類似性」に基づく免疫の誤作動(交差反応)が存在する可能性を提示した、重要な知見となっています。

*管理人の見解:このAQP5との相同性はとても興味深いが、全身性にAQP4が発現しているにも関わらず中枢神経のみ抗AQP4抗体で障害されるのは「補体制御因子の有無による」ということがしられている。このためたとえAQP5と相同性があるからといって、補体制御因子が存在すれば障害はされないのではないか?という疑問もある。

CD19モノクローナル抗体イネビリズマブの有用性に関して

シェーグレン症候群合併例における有用性のケースレポート “A case report of AQP4-IgG-seropositive refractory neuromyelitis optica spectrum disorder patient with Sjögren’s syndrome and pancytopenia treated with inebilizumab” Front. Neurol. 15:1371515. doi: 10.3389/fneur.2024.1371515

【症例の基本情報】

  • 患者: 49歳 女性
  • 確定診断: シェーグレン症候群(SjS)および汎血球減少症を合併した、抗AQP4抗体陽性の難治性視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)

【臨床経過(タイムライン)】

① 既往歴(2017年) ドライアイ、ドライマウス、白血球・赤血球・血小板の減少、および抗SSA抗体陽性が認められ、SjSおよび汎血球減少症と診断されました。しかし、日常生活への影響が少なかったため、無治療で経過観察されていました。

② NMOSDの初回発作(2022年8月) 突然の両下肢の脱力(歩行不能)、尿失禁、全身(特に頸部と上肢)の激しい痛みと痒みが出現しました。

  • 検査: MRIで頸髄から胸髄にかけて広範な脊髄病変(長大脊髄病変)を確認。
  • 治療: ステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1g)とシクロホスファミド(0.6g)の投与により歩行可能に回復。ステロイドは内服へ切り替え、3ヶ月後に中止されました。

③ 重篤な再発と治療抵抗性(2023年2月) 再び両下肢の脱力が出現し、ベッド上で全く動かせない状態(筋力グレードI)となりました。さらに、尿と便の貯留、感覚脱失(胸骨柄レベルまで上昇)、両眼の視力喪失が加わりました。

  • 治療: 再度ステロイドパルス療法を行いましたが症状は悪化し続けました。その後、血漿交換療法(PLEX)を3回実施したことで進行は止まりましたが、症状の改善(寛解)はみられず、全身の浮腫が出現しました。

④ 確定診断と転院(2023年3月) 血液および髄液検査でAQP4-IgG陽性が判明し、正式に「SjSと汎血球減少症を合併したNMOSD」と診断され、転院となりました。

  • 転院時(3月17日)の状態: 両下肢筋力グレードI、視力障害、排泄障害、ドライアイ・マウス。血液検査では、ヘモグロビン 78g/L(重度の貧血)、血小板 24×10^9/L、白血球 9.5×10^9/L、B細胞数 47.57/μLと異常値を示していました。

⑤ イネビリズマブの投与と劇的な回復(2023年3月〜5月) 従来の治療が効かない難治性であったため、B細胞のCD19を標的とする**イネビリズマブ(300mg)**が3月22日と4月13日の計2回投与されました。

  • 投与後約3週間(4月13日): 下肢の筋力はグレードIIIに改善し、排泄障害も緩和、視力も徐々に回復し始めました。血液検査ではヘモグロビン 101g/L、血小板 56×10^9/Lと汎血球減少も改善傾向を示しました。
  • 投与後約1ヶ月半(5月6日):
    • 神経症状: 下肢筋力はグレードIV+に改善(歩行可能レベル)、両眼の視力は完全に回復し、排泄障害も消失しました。
    • 合併症の症状: ドライアイおよびドライマウスの症状が緩和されました。
    • 血液検査: ヘモグロビン 116g/L、血小板 56×10^9/L、白血球 3.5×10^9/Lと汎血球減少が著明に改善し、大元の原因であるB細胞数も 3/μL まで劇的に減少(枯渇)しました。

【症例のポイント】

この症例は、ステロイドや血漿交換といった従来の標準的な免疫抑制療法が効かないほど重症化したNMOSDに対して、イネビリズマブが神経症状(完全麻痺や視力喪失)を劇的に回復させただけでなく、同時に併発していたSjS(外分泌腺の症状)や汎血球減少症(血液の症状)まで一挙に改善させたという点で、極めて画期的な報告(世界初)とされています。