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Vestibular epilepsy

先日「原因不明の繰り返すめまい症例」として経験しました。頭位変換に関係なく、突然始まり、突然おわり、持続時間は30秒程度、毎回全く同じパターンのめまい感で、脳波上側頭部にてんかん性放電を認めました。耳鼻科専門病院で精査され、前庭障害は否定されていましたが頻度が多く患者さんが困っていた症例です。

以下文献:Journal of Neurology (2025) 272:68 Notebook LMに聞いた内容です

マルセイユ大学病院のてんかん専門部門で外来受診した約2000人の患者データベースの中から、前庭性てんかんの基準に合致する31人を抽出して後方視的に調査した結果 31例の検討

病巣・焦点はどこか?

前庭性てんかんは脳内の単一の点ではなく、側頭葉・頭頂葉・後頭葉が交わる領域(TPO接合部)を中心とした、広く分布する前庭皮質のネットワークが焦点として考えられています

  • 前庭皮質のネットワーク: 人間の前庭皮質は脳の単一の小さな領域ではなく、複数の皮質領域に分散しています。主に、**頭頂葉皮質(parietal cortex)、体性感覚皮質(somatosensory cortex)、および頭頂島前庭皮質(parieto-insular vestibular cortex)**といった領域で構成されています。また、脳への直接刺激による研究では、シルヴィウス裂周囲(perisylvian)や頭頂葉皮質において顕著な反応が確認されています。
  • 脳波(EEG)で捉えられる焦点部位: 実際のてんかん患者の脳波検査において異常波(焦点)が最もよく観察されるのは、**側頭部(temporal)、頭頂部(parietal)、およびその後方にある側頭・頭頂・後頭接合部(temporo-parieto-occipital junction:TPO接合部)**です。
  • 左右の偏り: 著者らが分析した患者データの脳波では、後部側頭部や頭頂部の電極で異常が目立ち、全体の64%(20人)の患者で右側の脳領域に異常が顕著に見られました(両側性の異常が見られたのは2人のみでした)

臨床像

・約1/3は純粋な前庭症状のみを呈する

発症年齢 主に若年層で発症し、初発症状が現れる年齢の中央値は24歳(範囲は2〜59歳)です。

中心的な症状(発作時の症状) 発作の主な症状として、**回転性のめまい(84%)**や、**不安定感・バランスの喪失(23%)**といった前庭感覚の異常が生じます。

発作の持続時間と頻度 発作の持続時間は非常に短く、1分未満から1時間未満であることが大半です(1時間以上続くケースは稀です)。頻度は、年に数回のまれなケースから、1日に複数回、あるいは毎月起こるケースまで様々です。 発症から診断までの期間平均は約3年

随伴症状 前庭症状だけでなく、以下のような様々な主観的・客観的症状を伴うことが多くあります。

客観的症状(てんかん性症状): 意識の減損(反応の消失:71%)、転倒(68%)、強直間代発作(39%)、失語(19%)、異常運動(16%)、眼振や眼球間代(6%)などの典型的なてんかん症状が見られることもあります
・一部の患者(約10%)では、頭部の動きや体位の変換といった末梢性の前庭刺激によって発作が誘発される
発作後・発作間欠期の症状 一部の患者(13%)は、発作が終わった後もほぼ持続的な不安定感やバランス障害を訴えており、これは発作後の状態の遷延、あるいは前庭システム全体の広範な機能障害を示唆している

主観的症状: 視覚症状(形が歪む、かすみ目など:35%)、疲労感・倦怠感(32%)、熱感(29%)、吐き気(26%)、聴覚症状(16%)、頭痛(13%)。

鑑別・診断

前庭性片頭痛(VM)、前庭発作症(VP)、前庭性てんかん(VE)の特徴

特徴前庭性片頭痛 (VM)vestibular paroxysmiavestibular epilepsy
めまいの持続時間5分〜72時間1分未満1分〜1時間未満
発作の頻度不規則、エピソード的(反復性)頻繁、1日に最大30回の発作再発性、毎日から年1回まで様々
誘因自然発症、頭部の動き、視覚刺激頭部の動き、過呼吸前庭刺激、体位変換
随伴症状頭痛、光過敏(羞明)、音過敏(音恐怖)、視覚性前兆耳鳴りや難聴などの聴覚症状聴覚・視覚症状、および時に運動症状
診断方法臨床歴、片頭痛の診断基準神経血管圧迫を評価するMRI、治療への反応TPO(側頭頭頂後頭)接合部における脳波(EEG)異常
治療への反応片頭痛治療に対する反応は様々カルバマゼピンに対する良好な反応抗てんかん発作薬に対する良好な反応
病態生理前庭-視床-皮質経路の機能障害前庭神経におけるエファプス放電(隣接線維間の異常伝達)前庭皮質における過興奮性
眼振発作中の自発眼振または頭位眼振過呼吸誘発性眼振一部症例における発作中の発作性眼振

診断基準(同文献での提唱)

  1. 発作の反復: めまいや不安定感といった定型的な発作性前庭症状を特徴とする発作が、少なくとも2回以上起こること。
  2. 短い発作時間: 発作の持続時間が短く、通常は1分から1時間未満であること。
  3. 脳MRIが正常: 脳MRI検査において、異常が認められないこと。
  4. 脳波(EEG)の異常: 覚醒時または睡眠時に、側頭部、頭頂部、および/または側頭・頭頂・後頭接合部に脳波の異常が認められること(標準的な脳波検査で結論が出ない場合は、睡眠時の脳波検査が必要です)。
  5. 治療への反応: 抗てんかん薬による治療に対して良好な反応を示すこと

治療

61%は単剤療法で治療され、全体の48%が完全に発作消失、74%が発作消失またはごく稀なごく軽微な症状のみに改善