基本
正常値:~5個/μL
*海外の文献では10個/μLを基準としているものもあるので注意が必要
細胞とは?=白血球
形態:単核球(≒リンパ球),多形核球(≒好中球)に分類
上昇の原因:中枢神経での炎症
*髄液蛋白の上昇(こちら)は患者背景による影響(高齢、頸椎症、糖尿病など)が大きく、必ずしも病的とはいえないですが、細胞数増多は確実に病的です。
細胞分画による原因推定
①単核球増多:自己免疫性,ウイルス性,結核性,リステリア etc
②多形核球:細菌性,Behcet病(初期・時間が経過するとリンパ球が増加する),薬剤性,ウイルス性の初期 etc
増加の程度の傾向(あくまで参考)
原則:炎症の首座が軟髄膜だと高度,脳実質だと軽度
・髄膜炎:高度増加が多い(3桁程度が多い)
*市中発症細菌性髄膜炎で初回髄液細胞数正常の報告も一定数ある(こちら)Ann Emerg Med. 2021;77:11-18.
・脳炎:髄膜炎に比して軽度である(初回は正常でフォローで上昇することもある:こちら)
*特にLGI1抗体脳炎(こちら)は髄液細胞数正常であることがほとんどであり逆に特徴的でもある
*下図は自己免疫性脳炎の髄液細胞数の比較

・肥厚性硬膜炎(こちら):軽度増加・正常~1桁のこともある
・脱髄性疾患:MS 増加しないこともある(10/μL前後が多い印象がある・増加する場合も軽度で50/μL以下)、MOGAD(こちら)かなり増加しやすい(髄膜炎ほどの3桁程度の上昇あり感染性と初期悩むケースも時々ある)、NMOSD 増加しやすい(3桁になる場合もある)
*上記は既報に加えて、管理人の経験則も多く含んでいる
その他の原因
・硬膜外膿瘍といった髄膜に接した炎症性病変(parameningeal inflammation)
・感染性心内膜炎(感染性動脈瘤からの炎症波及)
・下垂体卒中(壊死組織による刺激・炎症)
*特に硬膜外膿瘍, 感染性心内膜炎では髄液細胞数増加のみで髄液から菌体が検出されない場合も多く注意.
参考:腰椎穿刺フォローアップでの細胞数増多について
文献:Reactive pleocytosis after repeated lumbar puncture — Implications for clinical practice. Eur J Neurol 2025 Apr; 32:e70117
・結論:腰椎穿刺を繰り返すことで約30%に細胞数増加を認めるため解釈に注意が必要
・患者背景:非炎症性疾患でベースラインの髄液細胞数<5μL(中央値2/μL)原因疾患:特発性頭蓋内圧亢進症が最多 79% 年齢35歳、女性75%
・2回目髄液検査(中央値6日後に実施):細胞数増加27%,中央値8/μL(最大30/μL)
*細胞数増多はなかった患者よりも有意に早期に2回目LP実施(中央値3.5日 vs 7日)
*細胞数増多を認めた90%は10日以内に2回目の髄液検査実施
・病態:LP自体による反応性の炎症が推察されている
*traumatic needle(20-22G)が使用されており、atraumatic needleでどうか?はわからない
