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ケタミン ketamine

作用機序:NMDA受容体阻害薬(非競合)
組成:ケタラール10mg/ml(製剤の種類:50mg/5ml, 200mg/20ml)*基本原液のまま使用する
最高血中濃度:1-5分、半減期:3.6+1.4時間

特徴:呼吸抑制効果が弱い(ベンゾジアゼピンと異なり),昇圧効果がある(循環動態が崩れている際の鎮静薬として優れている)、唾液分泌量増加するがスコポラミンなどで対応可能
副作用:血圧上昇・唾液分泌量増加・嘔気・幻覚 *頭蓋内圧亢進に関して否定されている

ケタミンにより頭蓋内圧は上昇しない

・非外傷性神経疾患でケタミン投与は頭蓋内圧を上昇させない Journal of Critical Care 2014;29:1096–1106.
・TBI(traumatic brain injury)でケタミン投与は頭蓋内圧を上昇させない Neurocrit Care 2014;21:163–173.
*”Ten false beliefs in neurocritical care”と題された神経集中治療の間違いをまとめた報告でも5番目のfalse beliefとして”Ketamine increases the ICP”が挙げられています.Care Med 44, 2222–2224 (2018). https://doi.org/10.1007/s00134-018-5131-y

てんかん重積に対しての3rd line therapy

・てんかん重積では病態としてGABA受容体のendocytosisによるinternalizationにより受容体の発現が減少することで、GABA受容体に作用する薬剤(ミダゾラム,プロポフォールなど)の効果が減弱する点が挙げられます。
・てんかん重積では同時にNMDA受容体(興奮系)が進行性に活性化しており、ケタミンはNMDA受容体阻害作用によりてんかん重積抑制効果が示されています。
・現状てんかん重積管理におけるケタミンの前向き研究は存在しません。
・安全性が高く、他のASMとのpolytherapyによるsynergy効果や、2nd line therapyに使用することも今後検討されるのではないかという議論もある。Epilepsia. 2023;64:797–810.
・下図参照元:Intensive Care Med 2024;50:1–16.

投与量:loading dose 2mg/kg、infusion rate 2-15mg/kg/hr

SRSE(supre-refractory SE)に対するケタミンの後ろ向きコホート研究 Neurology® 2020;95:e2286-e2294.

・68例のケタミンを使用したSRSE症例を後ろ向き検討(11例でinvasive multimodality monitoringを実施)
・年齢53±18歳、女性46%
・原因病態:心停止 27%, NORSE 18%, 脳血管障害 16%, 感染 12%, てんかん 9%, その他 19%
・予後:mRS退院時 5±1, 院内死亡 46%, GOSE退院時 2±1
・ケタミン投与前のASMの種類:2±1種類
・ASM内訳:LEV 40%, PHT 25%, LCM 14%, VPA 7%
ケタミン投与後81%が24時間以内に50%以上のseizure burden現象効果あり(完全頓挫は63%)
・ケタミン投与量(平均):2.2±1.8mg/kg/hr、投与期間(中央値):2日
・ミダゾラム投与量(ケタミン開始時):1.0±0.8mg/kg/hr,開始時期(ケタミン投与前)0.4日
・ケタミン使用は血圧(MAP)安定と相関あり、昇圧薬使用の必要性が減少
ケタミンにより頭蓋内圧亢進,脳血流量,CPPいずれも影響なし
*This study provides Class IV evidence that ketamine decreases seizures in patients with SRSE.

RSE, SRSEに対してのケタミンの有用性に関するsystematic review and meta-analysis

“Efficacy of IV Ketamine in Refractory/Super-Refractory Status Epilepticus A Systematic Review and Meta-Analysis” Neurol Clin Pract. 2026;16:e200584. doi:10.1212/CPJ.0000000000200584

・14の研究(388例のRSE/SRSEケタミン投与された成人* CSE/NCSEともに含まれている)が対象 原疾患:低酸素脳症 31%, その他 69%(細かい内訳の記載はない)
ケタミンによる発作停止率 64% (定義は臨床上または脳波上の発作停止、ケタミン開始から24時間以内の発作停止を基本としているが一部不統一である)
・発作停止におけるケタミン反応群と非反応群の違い:ケタミン開始のタイミングが有意差あり(3.2日 vs 4.3日 平均 p<0.0001)、投与量(全体平均2.5±1.4 mg/kg/hr)や投与期間(平均5.0±4.2日)であり両群間に有意差なし
・安全性:最も多い副作用は分泌物の増加 副作用によるケタミン投与中止は0.7%と稀
・先行薬剤の投与量に関する記載はなし、投与期間に関しても記載はない
・Limitation:発作停止の定義が不均一、患者背景が不均一、どの薬剤を先行投与しているかまた併用しているかがはっきりしない、投与開始タイミングと発作停止の因果関係が証明難しいなど

・まとめ:ケタミンは約2/3で発作停止を達成し、補助療法としての役割を担う、忍容性も高い

⇒今後の前向き研究に期待!

ケタミンによる胆汁うっ滞型肝障害

“Long‐term ketamine infusion‐induced cholestatic liver injury in COVID‐19‐associated acute respiratory distress syndrome” Critical Care (2022) 26:148

・COVID19関連ARDSにおけるケタミン長期持続投与による胆汁うっ滞性肝障害についての検討
・背景としてCOVID19関連ARDSは従来の鎮静薬に抵抗性でケタミンを使用することが多い⇒しかし胆管障害の報告が増加したため検討
・COVID19関連ARDS患者243例(単一施設の観察研究)、ケタミン投与170名(全体の70%) 投与量中央値1.4mg/kg/hr, 投与期間中央値9日間
・結果:投与期間が長くなるほど、1日投与量が多いほどBil値が上昇する相関関係あり(プロポフォールなどその他の鎮静薬には認めず)
・ICU滞在中に胆汁うっ滞型肝障害を呈した患者は全体の47%(多くがケタミン投与あり)
・多変量解析:ケタミンでのHR 3.2
・1.5 mg/kg/hの投与速度でケタミンを投与した場合、ケタミン単独に起因する臨床的に顕著なビリルビンおよびアルカリフォスファターゼの上昇が認められるまでに、約14日間かかる
・Bil値 投与前中央値0.23mg/dL(ケタミン投与群)
1.5mg/kg/hrで投与継続した場合14日後Bil 0.88mg/dL上昇 最も多くケタミン投与され患者群は最大Bil3.5-4.7mg/dL, 最大は7.0mg/dL
・病態生理は?解明されていない 推定されているメカニズムについて
1胆管の平滑筋細胞のNMDA受容体を遮断して胆道機能障害を生じる
2Oddie括約筋の収縮
3迷走神経背側運動核のNMDA受容体遮断(胆のうの異常運動誘発)
4活性代謝産物(ノルケタミン)の沈殿→胆汁中にノルケタミンが沈殿しやすくなる
*腎機能障害があるとケタミンや代謝物の排泄が低下してより悪化する可能性がある

管理人の考え

・内科医はケタミンを普段使用する機会に乏しいため、どうしても親しみが乏しい薬剤を使うことに対して億劫になりがちです。
・しかしてんかん重積の病態生理(特にベンゾジアゼピン耐性機序のGABA受容体internalizationやNMDA受容体亢進の点)からはケタミンは極めて理にかなっており、有用と考えられます。
・ここ最近私も使用しておりとても有用であり、かつ合併症もないです。
・3rd line therapyでバルビツールを使う前に(つまりミダゾラム、プロポフォールの後)ケタミンを使用するのが良いと思います。またさらには3rd line therapy導入の順番として、プロポフォール→ケタミン→ミダゾラム→チオペンタールという順での管理が個人的には良いと考えております。やはりチオペンタールは合併症が多いのでできるだけ避けたいです(こちら)。
・またてんかん重積の病態と薬理機序からはより早期(つまり2nd line)から使用する推奨が今度でてくる可能性が十分あります。
・多くの場合で2mg/kg/hr程度の使用で落ち着くことが多いですが、超重症例などはそれ以上の投与量が必要なこともあります。ただ問題なのはシリンジポンプが追い付かないというがあります、、、。

文献

ketaminとてんかん重積について病態生理から非常に詳しくまとめており勉強になる(小児を対象としたreview articleではあるが)Epilepsia. 2023;64:797–810.