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そのLPDsはseizureなのか?破壊性病変を反映しているだけなのか?

昨日単純ヘルペス脳炎の患者さんが入院となりました。途中でFIAS(focal impaired aware seizure: 焦点意識減損発作)を繰り返し、持続脳波管理としています。一般的にlateralized periodic discharges(以下LPDs)は①Seizureを反映した放電、②破壊性病変により生じている放電いずれも反映している可能性があります(もちろん両者が混在している場合もあります)。ここではどういう点に着目して両者を鑑別するか?(Seizureか?破壊性病変を反映しているだけか?)を検討します。ここでは急性期脳波の文脈においての解釈です。ACNSでの用語整理についてはこちらをご参照ください。

結論としては「脳波単独での判断はできず、臨床像やetiology、画像を含めて総合的に解釈する」ことになります。以下の参考文献のconclusionには”Interpretations of EEGs in critically ill patients require a global clinical approach, one not limited to the EEG patterns but including clinical features, and now, the results of cerebral imaging.”と記載されており、多面的な判断が求められます。

critical care EEG全般においてですが、急性脳損傷では脳が破壊され興奮性のアミノ酸が放出、細胞外へK多数→細胞の興奮性が増す→細胞障害が進行という悪循環の中にあり、またその中で脳波所見も変化していき脳波の波形自体も非常に多彩かつ複雑になります。なので単一の指標のみをもってこうだということは難しいとは思いますし、まだまだ確立していない側面も大きいと思います。

参考文献:”Lateralized Periodic Discharges: Which patterns are interictal, ictal, or peri-ictal?” Clinical Neurophysiology 2021; 132: 1593–1603.

まとめ図

破壊性Seizure
LPDsLPDs-properLPDs-plus
周波数≦0.5Hz≧1Hz
波形の変化乏しいダイナミックな変化を伴うEvolution
脳波以外の情報臨床所見+画像所見(脳血流評価)

*上記論文では”Interictal/irritative brain injury” or “Peri-ictal/ictal”と分類している

脳波所見上の特徴

LPDsにmodifierがあるかどうか?:modifierつまり、periodic dischargeにsharp waveがのっかっているなどの所見を伴う場合はSeizureらしさが高まります。以下はいずれも単純ヘルペス脳炎での脳波所見。

*LPDs-max: LPDs plusの中でもictalを示唆する所見であり、ベンゾジアゼピン系をはじめ治療抵抗性のfocal NCSEを呈する
periodic polyspike and wave activity(PPSWA):7-9Hzの同程度の振幅のsinusoidalなburstに徐波が後続する波形(周波数は2Hzを超えることはない)、部位はT-P-O領域に認める、振幅は左右差がある
⇒必ず意識障害を伴い、Seizureを示唆する
②focal burst-suppression pattern/post-LPDs flattening
⇒ictal patternを示唆する

周波数:周波数が上昇するほどSeizureらしさは上昇します(下図)JAMA Neurol. 2017 Feb 1;74(2):181-188

波形:Seizureはdynamicなプロセスで、波形の形態や空間的広がり、周波数が変化していきます。一方で破壊性の病変はこれらが変化に乏しい点が特徴です。

脳波以外の所見

前述の通り脳波だけで破壊性か?Seizureか?を完全には区別しきれないので、臨床症状+画像所見(脳血流を評価する核医学、MRIでのASL(arterial spin labeling)など)などを含めた総合判断が必要になります。

(管理人の自分用メモ)
・ictal vs inter-ictalの)討が主体で、irritable brain injuryはまた別に検討が必要なのかどうか?
・現状ictalに介入が必要という意味ではそこまでこだわる必要がないのか?