臨床像
ポイント4点
①立ち上がり:急峻(突発性 sudden)
②持続時間:短い (筋電図で陽性ミオクローヌスは20-60msec, 陰性ミオクローヌスは100-500msec)
③時間的な規則性:不規則(基本的には)
④動きの広がり:同一平面内ではない
*筋収縮が抑制される場合は陰性ミオクローヌス(negative myoclonus)= asterixisと表現します(こちら)。陽性ミオクローヌスと陰性ミオクローヌス(=asterixis)は共存することもしばしばあります。
*要素を分解して言語化すると上記の表現になりますが、結局のところ「ぴくっ」ということです。
部位:顔面、四肢、体幹 左右は一側性・両側性いずれもあり つまり「どこでもあり」ということです
増悪因子:姿勢時・動作時に増悪する場合あり(低酸素脳症後のLance-Adams症候群は特に動作時に誘発される)
分類
①皮質性ミオクローヌス:大脳皮質1次感覚運動野の神経細胞の過剰興奮により生じる不規則あるいは律動的な電撃的筋収縮
・皮質反射性ミオクローヌス:刺激過敏性があり体性感覚・聴覚・視覚刺激で誘発される
・皮質反射性陰性ミオクローヌス
・自発性皮質性ミオクローヌス
・持続性部分てんかん
*言葉の注意点 ミオクロニー発作=ミオクローヌスがてんかん性に出現するもの
②皮質下性
・網様体反射性ミオクローヌス
・自発性網様体性ミオクローヌス
・その他の皮質下性ミオクローヌス
③脊髄性
④心因性
参考文献:BRAIN and NERVE 75 (1):45-58,2023
原因
低酸素脳症
脳炎:自己免疫性(NMDAR、LGI1)、感染性(ヘルペス、HIV、亜急性硬化性全脳炎など)
傍腫瘍性:opsoclonus-myoclonus syndrome
代謝性:電解質異常、血糖異常、腎機能障害、肝機能障害など
てんかん:JME、進行性ミオクローヌスてんかん(ミトコンドリア脳症、BAFME)など
変性疾患:アルツハイマー型認知症、レヴィ小体型認知症、基底核変性疾患(Wilson病、ハンチントン舞踏病、大脳皮質基底核変性症候群)など
その他:クロイツフェルト・ヤコブ病、TMA(transient myoclonic state with asterixis)
薬剤
・抗うつ薬:リチウム、SSRI(セロトニン症候群)、SNRI、MAOB阻害薬、TCA、抗精神病薬
・抗菌薬:ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系
・抗てんかん発作薬:フェニトイン、バルプロ酸、ガバペンチン、カルバマゼピン
・抗パーキンソン病薬:L-dopa、ドパミンアゴニスト
・鎮静薬:リドカイン、ミダゾラム
・その他:コリンエステラーゼ阻害薬、NMDA受容体拮抗薬 など
*入院患者の新規発症ミオクローヌスは脳症に随伴する代謝性・薬剤性が圧倒的に多い
検査
ミオクローヌス自体の検査(皮質性かどうかの判断)
表面筋電図:不規則で持続の短い(20-60msec)の筋放電を認める *振戦と異なり主動筋と拮抗筋が同時に収縮することもある *陰性ミオクローヌスでは100-500msecの筋放電の停止を認める
SEP:皮質性ミオクローヌスではgiant SEPを認める場合がある
C reflex:末梢神経刺激により大脳皮質を経由して戻ってくる潜時の長い筋放電(長ループ反射)が誘発される
Jerk-locked back averaging(JLA)法:筋放電を基準として、その直前の脳波を加算平均する方法
これらの検査は私も大学病院勤務のときにやっていましたが、市中病院勤務になってからSEP, C-reflex, JLAは恥ずかしながら全くできていません、、、。入院患者が新規にミオクローヌスを呈した場合はまずまず皮質性なので、わざわざ局在をこれらの検査で詰めなくとも、その原因となる病態を精査治療すれば良いのではないかとも個人的には思います(専門的な検査なのでふつうの市中病院では難しいのではないかとも思います)。
ミオクローヌス原因の検査
・採血、薬剤歴確認
・脳波
・頭部画像検査
治療
1:原疾患治療
2:対症療法
・GABA作動薬:クロナゼパム1-3mg/日(分割投与)
・ASM(anti-seizure medications):レベチラセタム、ペランパネル
*Lance-Adams症候群:クロナゼパム(多い量)、ペランパネル少量
参考文献
CONTINUUM (MINNEAP MINN) 2019;25(4, MOVEMENT DISORDERS): 1055–1080. myoclonusに関するreview
音成先生「あの症例どうなった」