Frenzel眼鏡の意義
目的:眼振の注視抑制を外す
・末梢前庭由来の眼振は注視(どこか一点を見つめる)ことで抑制されますが、中枢性の眼振は抑制されない *Pract Neurol 2020;20:446–450.のsupplemental video 1が分かりやすい(こちら)

ポイント1:Frenzel眼鏡がないと “眼振なし”と評価できない
・末梢前庭由来の眼振はFrenzel眼鏡「なし」だと注視抑制により観察が難しくなる
・Frenzel装着下で眼振を認めない場合に、はじめて“眼振なし”と評価できる(逆にFrenzel眼鏡がない状況では「眼振がない」とは評価できない)
・カルテに眼振所見を記載する際には「Frenel眼鏡装着下」または「Frenzel眼鏡装着なし」と記載しないと解釈がわからない
ポイント2:②Frenzel眼鏡がないと注視抑制の有無を評価できない
・注視抑制で眼振が減弱しない場合は末梢前庭由来ではない⇒つまり中枢性を示唆する根拠になる
どうすればFrenzel目眼を安価に作れる?
Frenzel眼鏡は数万円して、なかなか病院で買ってもらえないことがあるかもしれません(私が今の施設に着任したときは総合内科管理のFrenzel眼鏡がないため2年越しで購入してもらいました)。ではどうやって安価にFrenezl眼鏡に類似したものをつくるか?論文をみつけました。こういったものもきちんと論文になるんだなーと感動です。
Yeolekar AM, Shinde KJ, Qadri H. Innovative Use of Google Cardboard in Clinical Examination of Patients of Vertigo. Clin Med Insights Ear Nose Throat. 2019 Oct 21;12:1179550619882012. doi: 10.1177/1179550619882012. PMID: 31673230; PMCID: PMC6804355.
VR用のとっても簡易的な段ボールのセットを利用する方法です。ここにレンズと顔にフィットする簡易的な板がついています。確かにこれは外からみると眼が拡大して、つけると注視抑制が外れます。眼と眼の間の距離が長い人には合わないかもしれませんが、確かに600円ちょっとでは優れていると思います。Amazonのリンクが下のものです。レビュー評価がめちゃ低いですが、これはあくまでもVRとして使用した場合の評価ですので。
この中にレンズと段ボールがセットになったパーツがあり、これだけで使えます。

Frenzel眼鏡は救急外来では必須アイテムです。厳しいことを申し上げますが、Frenzel眼鏡を救急外来に置いていない病院を研修病院として選ばない方が良いです。Frenzel眼鏡を救急外来に置いていないということは、「めまい診療は雰囲気でやっています!」と自ら宣言しているようなものです。このため、たとえ自施設にFrenzel眼鏡がなかったとしても、こうした工作をしながら「標準的な」めまい診療を目指して工夫していきたいです。
参考文献
Pract Neurol 2020;20:446–450. Frenzel眼鏡に関するreview article さすがPract Neurol 動画もあるので勉強になります。 ”Examining a dizzy patient without using nystagmus glasses is like examining a weak patient without using a tendon hammer.”とKey pointの最後に記載しています。