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PTTD posterior tibial tendon dysfunction 後脛骨筋機能不全

本日外来でこれかなーという方がいました。左足関節の筋力低下で腰椎椎間板ヘルニアの診断となっていたけれど改善なく紹介となった例です。MMT上左の後脛骨筋のみ顕著に筋力低下があり(その他TAなどは筋力低下なし)、左が扁平足になっており、感覚障害はなくアキレス腱反射は左右差なく保たれていました。

後脛骨筋(Posterior Tibialis)の解剖

起始:脛骨腓骨の後面 停止:舟状骨、楔状骨、第2-4中足骨
*足根管を通過する
*内果をぐるっと回るようにかなり急カーブに走行するので内果後部で腱が抵抗や摩擦を受けやすい(また同部位は血管に乏しい)
神経支配:髄節=L5、末梢神経=脛骨神経 *下垂足の鑑別上重要な筋肉(こちら
機能:足関節底屈+内反足底アーチ(土踏まずの部分)を引っ張り上げて支える(安定させる)

病態

後脛骨筋腱が変性(微小な機械的損傷が繰り返し生じることにより生じる)*加齢性が多い
⇒後脛骨筋腱が肥厚、炎症を生じる *関節リウマチなどで生じることもある
⇒腫脹すると鞘をスムーズに通過できなくなり(引っかかってしまい)機能障害を生じる
扁平足になり、下腿が外側(腓骨側)へ傾く、足関節の機能不全
⇒長期経過すると固定化されてしまう(腱が部分断裂したり、完全に断裂する場合もある)

50歳以上の非外傷性の足底内側の疼痛や後天性の扁平足(adult-foot acquired flatfoot deformity)ではPTTDを考慮する
(典型的には60歳以上の肥満女性に多い)

身体所見

“too many toes” sign:足が外反するため後ろからみて足趾が沢山みえる(みえてしまう)
*写真はFoot & Ankle Orthopaedics 2019, Vol. 4(1) 1-17より


・内果後部に圧痛や腫脹を認めることが多いが、進行すると疼痛は少なくなり(後脛骨筋腱が伸びたり断裂する)、疼痛がないからといって否定することはできない
・片足立ちで踵を挙げる(つま先立ち):できない

治療

・早期診断例:サポート具(インソールなど)、後脛骨筋の筋力トレーニング
・変形が進むと手術が必要であり、早期認知と介入が重要

参考文献

“Adult-Acquired Flatfoot Deformity”Foot & Ankle Orthopaedics 2019, Vol. 4(1) 1-17 後天性扁平足に関するreview article

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