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「あの症例どうなった?」著:音成秀一郎先生

ここ最近で最も勉強になったオススメの医学書を紹介させていただきます。私のような若輩者が音成先生の本について語るのは恐れ多いのですが、、、私の思う本書の素晴らしい点は以下です。

1:極めて実臨床に沿っており、理想論や机上の空論になっていない
・音成先生のてんかん発作の3原則(本書で何度も強調されております)、また原則に外れる場合に考えるべき鑑別への整理が実臨床に則してとても分かりやすく勉強になります。本書全体を通じてこの軸に沿って症例の解説があるため、繰り返し原則を確認することができ読み進めるごとに理解が深まります。ここまでわかりやすくてんかんの臨床思考回路を解説した本は過去にないのではないかと思います。
・誰もが(NeurologistだけではなくGeneralistも)音成先生の整理された思考回路をきちんと脱線せずに辿ることができるようになっています。置いていかれる感じがせず、読者フレンドリーです。

2:病歴に軸を置いた構成になっている
・症例の病歴問答を元に本書は構成されています。てんかんというと脳波が読めないといけないのか?という苦手意識がどうしてもありますが、症候学と病歴が何よりも重要というNeurologyの基本を重視した臨床的なアプローチが本当に素晴らしく勉強になります。
・またこの病歴問答の途中に(注)がさりげなく挿入されており、そこでの一言解説がとても勉強になります(さりげなくかかれているのですが、なるほどー!と勉強になる内容に溢れています)。たとえば306ページで「注1:このように、意識減損する過程の自覚症状を言葉でうまく説明できない点は、むしろてんかん発作の感じ方の特徴です。言葉ではいい表せないような意識の遠のいていく感覚などです。」と記載があります。この臨床での肌感覚を言語化されていらっしゃるところがとても勉強になります。
・またでは実際にどのように問診すればよいか?という点の解説も詳しいです。PKDで「かけっこでのよーいドンが苦手でしたか?」や「動かしにくいときは、体がねじれている感じがしませんか?」など、具体的に記載されており明日からの臨床に役立ちます。

3:実際ここで悩むだよなーという痒い所に手が届く内容
・私がレクチャーをするときに注意しているのは「レクチャーしやすい内容を無意識に(または意識的に)選んでしまっていないか?寄せてしまっていないか?」という点です。例えば臨床研究やエビデンスの紹介・羅列は白黒はっきりしているので解説・レクチャーは比較的簡単です。
・しかしこうしたクリアカットなテーマではなく、グレーゾーンが多いテーマはレクチャーしづらさがあります。しかし、音成先生はこのグレーゾーンに対して具体的にどうアプローチするか?示唆に富んだ解説をしていただいています。ここも読者フレンドリーな視点です。
・てんかんの領域において、比較的レクチャーしやすい内容は個人的には「薬の話」かと思います。ここはある程度論文もあるし、ガイドラインもあるし、解説しやすいです(この薬の副作用はこうですー、焦点発作では1st choiceですー など)。ただ実際に症例にどうアプローチするか?というところがプライマリケアやNeurologyの最初で最も悩むところ(そもそもてんかんなのかどうか?という点)であり、ここはエビデンスだけではなく臨床での知恵が求められる領域です。音成先生の豊富な臨床知が丁寧に言語化されており感銘を受けます。

ということで私の拙い紹介で強縮です、、、。Neurologyに興味がある先生方にはとてもおすすめな書籍です!(私がもっと若いときに読みたかったなーと思います)以下Amazonのリンクです。

また音成先生のその他の御著書もとても勉強になりますので、以下にAmazonのリンクを掲載させていただきます。