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気管支喘息 asthma

  • 2024年10月31日
  • 2024年11月1日
  • 呼吸

病態

定義:気道の慢性炎症+変動性のある気道狭窄+臨床症状
Ⅰ型アレルギー:Th2細胞活性→IL-4,5,13→好酸球動員・IgE経路で肥満細胞脱顆粒
*好酸球増多に関してはこちら


FeNO>35ppb:好酸球性の炎症を反映している(=ICS効果ある)
重症度

発作強度軽度中等度高度重篤
呼吸困難臥床可能臥床不能体動困難呼吸減弱・停止 チアノーゼ
動作やや困難かなり困難 かろうじて歩ける歩行不能 会話困難会話不能 体動不能 錯乱/意識障害 失禁
検査PEF80%以上60-80%60%未満測定不能
SpO296%以上91-95%90%以下90%以下
PaO2正常60mmHg超60mmHg以下60mmHg以下
PaCO245mmHg未満45mmHg未満45mmHg以上45mmHg以上

アスピリン喘息 aspirin exacerbated respiratory disease(AERD)

・病態:アレルギー反応ではない(海外の文献ではアスピリン喘息という言葉はない)
→COX抑制によりLTA過剰になることで気管支喘息様の症状が出現することが病態
・鼻症状(嗅覚低下)が先行する
コハク酸エステルは避ける→リン酸エステルを投与する

鑑別診断

VCD(vocal cord dysfunction):声帯機能不全
気管支腫瘍:私はこの経験がありかなり反省しています
EGPA:成人発症喘息と好酸球増多→末梢神経障害 こちら
ABPAこちら

急性増悪の治療

0:ABCの確認+検査(血液ガス確認+ピークフローメーター+胸部レントゲン)
1:酸素投与 SpO2>90%目標 (もしくはNPPV・人工呼吸管理)
2:SABA吸入
3:ステロイド全身投与(内服・静注)
4:アドレナリン0.3mg筋注
(5:マグネシウム投与)

0:ABCの確認+検査(血液ガス確認+ピークフローメーター+胸部レントゲン)
・呼吸筋疲労がおこると換気が充分におこなえず、むしろwheezesを聴取しない”silent chest”となる。「wheezesが聴取されなければ大丈夫」な訳ではない点に注意。
・”wheezes”は喘息以外の特に心不全でも認める場合が多く注意。
・血液ガス検査で呼吸性アシドーシスを認める場合は、補助換気(人工呼吸管理もしくはNPPV)が必要となる可能性が高い。例えPaCO2=40mmHgと正常範囲内の値であったとしても呼吸回数30回/分でPaCO2=40mmHgは異常(本来呼吸回数30回/分ならPaCO2=30mmHg程度のはず)なので呼吸性アシドーシスの病態があると判断する。ここは日々呼吸回数・呼吸様式と血液ガスPaCO2の対応関係を比較検討する訓練を積むことが重要。
・胸部レントゲンでは気胸、肺炎、肺水腫などの除外を行う。

1:酸素投与
・SpO2>90%を目標に酸素投与を行う(酸素療法に関しては別項を参照)。
・急性のPaCO2上昇ではCO2ナルコーシスのリスクはそこまで高くないため、必要な酸素投与はしっかり行うべき。CO2ナルコーシスを恐れすぎて本来必要な酸素投与を躊躇してはいけない。

2:SABA(short acting beta agonist)吸入
・製剤:プロカテロール(商品名:メプチン)、サルブタモール(商品名:ベネトリン)*どちらを用いても良い
・救急外来では基本ネブライザーを使用する。
・20分おきにネブライザー吸入を3回まで繰り返す。
(処方例)メプチン0.3-0.5ml +生理食塩水2mL→ネブライザーで吸入

3:ステロイド全身投与
・喘息発作時にはステロイドの吸入ではなくステロイド全身投与(内服・静注点滴)を行う点に注意。
・静注の場合:アスピリン喘息ではコハク酸エステルは禁忌となるため、リン酸エステルのデキサメタゾン(デキサート)、ベタメタゾン(リンデロン)を点滴で使用する。
・中等症以上の発作がある場合、もしくはSABA吸入の反応性が悪い場合は無理にSABA単独で粘らずに早期からステロイド投与を行うべき。
(処方例)
リンデロン4-8mg + 生理食塩水50ml 30分かけて投与
ソル・メドロール40-125mg + 生理食塩水50-100ml 30分かけて投与(アスピリン喘息が除外されている場合)

4:アドレナリン投与
・呼吸状態が悪い場合は待たずに早期に投与を検討(ガイドラインごとに推奨度は異なる)。筆者は反応性が悪い場合は早期から積極的に使用している。
(処方例)アドレナリン0.3mg 筋注(大腿外側広筋)

5:マグネシウム投与
・エビデンスは確立していないが上記で治療抵抗性の場合は検討。
(処方例)硫酸マグネシウム2g + 生理食塩水100ml 1時間かけて点滴投与

コントロールの治療

基本:吸入ステロイドICSが基本

・管理目標:症状 正常な呼吸機能を保つ PEF>80%, 日内変動<20%未満
・増悪因子:FeNO高値 ICS未使用

*抗体製剤
抗IgE抗体:オマリズマブ IgE高値 30-1500 アトピー型喘息 肥満細胞のIgE受容体
*慢性蕁麻疹適応あり300mg q4w 12週間使用して効果ない場合
抗IL5抗体:メポリズマブ EGPAにも適応あり
抗IL5Rα抗体:ベンラリズマブ 好酸球性気道炎症 Eosino150-300, 喀痰中好酸球3%

*その他治療
気管支熱形成術(気管支温熱療法):気管支平滑筋の量を減らす

吸入薬

SABA

SABAプロカテロールサルブタモール
商品名メプチン  スイングヘラー/エアーメプチン 吸入液サルタノール インヘラーベネトリン 吸入液
剤形DPI/pMDIネブライザーpMDIネブライザー
投与量発作時1回2吸入 (最大8吸入/日)0.3-0.5mL+ 生理食塩水2mL発作時1回2吸入 (最大8吸入/日)0.3-0.5mL+ 生理食塩水2mL

ICS

ICSシクレソニドフルチカゾンブテゾニドベクロメタゾン
商品名オルベスコ インヘラーフルタイド ディスカス/ロタディスク/エアゾールパルミコート タービュヘイラー/吸入液キュバール エアゾール
剤形pMDIDPI/pMDIDPI/ネブライザーpMDI
投与量1日1回 1回100-400μg吸入1日2回 1回100-400μg吸入1日2回 1回100-400μg吸入1日2回 1回100-400μg吸入

ICS/LABA

ICS/LABAフルチカゾンフランカルボン酸/ ビランテロールトリフェニルブデソニド/ ホルモテロール
商品名レルベア エリプタシムビコート タービュヘイラー
剤形DPIDPI
投与量1日1回 1回1吸入1日2回 1回2-4吸入
特徴1日1回発作時も使用可能(SMART療法)

参考:妊娠と喘息
・ICS吸入+発作時SABAいずれも妊娠中問題なし