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上部消化管出血

血を吐いた場合出血源は3つの可能性「消化管」、「気管支~肺」、「鼻~咽頭~喉頭」がある。
1:消化管(吐血):嘔気・嘔吐を伴う、食物残渣の混入 
2:気管支~肺(喀血):咳嗽のタイミングで血を出す、泡沫状
3:上気道・口腔:血液が咽頭へ垂れてくる

*上部消化管出血を示唆する所見(JAMA. 2012;307(10):1072-1079)
・過去の上部消化管出血 感度22%、特異度96%、陽性尤度比6.2、陰性尤度比0.81
・メレナ 感度49%、特異度98%、陽性尤度比25、陰性尤度比0.52
・胃管から血液もしくはコーヒー残渣様 感度44%、特異度95%、陽性尤度比9.6、陰性尤度比 0.58
・BUN/Cre比>30 感度51%、特異度93%、陽性尤度比7.5、陰性尤度比 0.53

原因

胃潰瘍・十二指腸潰瘍こちら)・AGML(急性胃粘膜病変)
・胃癌・食道癌
・食道静脈瘤
・食道潰瘍:薬剤(ビスフォスフォネート製剤)・Candida・CMV
・大動脈十二指腸婁(こちら) *腹部大動脈瘤の手術歴を必ず確認する
・Mallory Weiss諸侯群

初期対応

・ABC確認、モニター装着 *特に窒息リスクがある場合は早期に気管挿管
・採血(血算・生化学・凝固PT/APTT/Fib、血液型・クロスマッチ)+末梢静脈ライン20G以上の太さ2本確保
・細胞外液点滴±輸血準備 RCC/FFP
・PPI静注投与*上部消化管出血が否定できない場合全例
(処方例:オメプラゾール20mg +生理食塩水20ml 静注、前後で生理食塩水フラッシュ)
・抗血栓薬確認:リバースが必要かどうか?
・既往歴確認:肝硬変、食道静脈瘤、胃十二指腸潰瘍、腹部大動脈瘤(術後)
・消化器内科相談→上部消化管内視鏡検査 or 造影CT検査
食道静脈瘤の場合:抗菌薬投与 *食道静脈瘤以外では投与の必要なし
(処方例:セフトリアキソン1g 点滴静注)*Hepatology. 2004 Mar;39(3):746-53.

*胃管挿入での胃内容物の確認:胃内容物に血液を認めなくても上部消化管出血の除外は出来ないため、行っても行わなくてもどちらでも良い(施設毎の判断)。上部消化管出血に対して感度42-84%、特異度54-91%(Acad Emerg Med. 2010 Feb;17(2):126-32.)

消化管出血での輸血に関して
出血急性期はHbは低下しないため指標にしない:出血急性期は血漿と血球を同時に失うため濃度は低下しない。しかし、その後体内の細胞外液が血漿にシフトすることで相対的に血球が薄まる過程でHb濃度は低下する。
→このため出血の急性期はHb価で輸血を開始するかどうかの判断は出来ない。ショックの場合、活動性出血が止まらない場合などはHb価と関係なく輸血を行う。


*また出血に凝固障害を合併している場合→出血のコントロールがつかない場合が多いため、特にFFPは準備に時間もかかるため早めにオーダーする。

収縮期血圧男性Hb女性HbBUN他のリスク因子
mmHgg/dLg/dLmg/dL
>1100>130>120<18.20脈拍 ≧100回/分1
100-109112-13110-12118.2-22.42黒色便1
90-99210-122<10622.4-283失神2
<903<10628-704肝疾患1
>706心不全2
“Blatchford score”  合計0点:低リスク 参考:Lancet 2000;356:1318

*vital signが安定していても緊急上部消化管内視鏡検査が必要な場合
1:非代償性肝硬変
2:失神の病歴がある場合

吐血で造影CT検査を上部消化管内視鏡検査よりも優先する場合:大動脈十二指腸婁(AAA術後、ステント留置患者において)