病態・臨床像
疫学:高齢者に好発 (70歳以上が多い、50歳以下はない *年齢から除外することが可能な疾患)
・滑液包炎(特に肩峰下滑液包・三角筋下滑液包・大転子滑液包・坐骨滑液包)が主体。主訴は「筋痛」>「関節痛」>>「発熱」。
・発症:急性~亜急性で発症日が特定できる場合が多い。
・筋力低下や筋原性酵素上昇は通常なく、炎症反応(ESR・CRP)は通常上昇。
・痛み・可動域制限の分布:肩(70-95%)>頚・下肢帯(50-70%)
*坐骨結節(座った時に痛い)・椎体の病変→高齢発症関節リウマチでは症状起こりにくい場所であり鑑別点
朝のこわばり:少なくとも30分以上「ベッドから起き上がれない」・「服を着られない」
*参考:全身性疼痛の鑑別
・リウマチ性多発筋痛症、EORA
・CPPD
・筋炎、横紋筋融解症
・菌血症
・悪性腫瘍骨転移、多発性骨髄腫
・電解質異常(低カルシウム血症)
・副腎不全
鑑別
原則:PMRは必ず他疾患の除外に尽力する・血液培養検査は必ずチェック
・自己免疫性:高齢発症関節リウマチ(EORA)、筋炎
・結晶性:偽痛風、石灰化腱板炎
・感染症:菌血症、感染性心内膜炎
・内分泌疾患:副腎不全、甲状腺機能低下症
・腫瘍:悪性腫瘍骨転移など
検査
・炎症反応:CRP,赤沈 その他:CK(PMRでは通常CK上昇しない)、甲状腺機能
・自己抗体:RF, 抗CCP抗体
・関節レントゲン、関節エコー検査
・血液培養検査(感染性心内膜炎要注意!)
治療
ステロイド PSL 15mg/日から開始(2-4週間継続)→PSL 12.5mg/日→PSL 10mg/日
*PSL 10mg以下では1mg/日を1-2か月のペースで漸減
*ステロイド反応性は良く、特徴的であり翌日には症状がすっかりよくなり患者さんから感謝される場合が多い。
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)に関して
病態:炎症症状と外頚動脈の分枝の血管炎による虚血症状を引き起こす
・発熱:不明熱の原因として重要
・頭痛:高齢者の新規頭痛では必ず考慮する(頭部全体や片側など疼痛部位は様々で、髪をとかす動作などで増悪する場合がある)
・視力低下(失明の原因となるため注意):虚血性視神経症(こちら)
90%:後毛様体動脈(眼動脈分枝) AION(anterior ischemic optic neuropathy)
10%:網膜中心動脈閉塞症 CRAO(central retinal artery occlusion)
・顎跛行(jaw claudication):食事を続けているとすぐにつかれる、食事に時間がかかるようになるなどの病歴(咀嚼筋の間欠性跛行症状)
・舌レイノー現象(冷たいものを飲んだ後に出現する唯一の疾患)
・乾性咳嗽、咽頭痛:まれながら呼吸器症状を認める場合もある
検査:PET-CT有用
診断:側頭動脈生検(事前に側頭動脈エコー検査で生検部位を考慮)、ステロイド開始後2周間以内であれば生検結果に支障は出ないとされている。病変が連続的に存在しないため、可能な限り長く採取(2cm以上)し、また陰性でも否定できないという検査特性を理解する。
治療:ステロイド±TCZ or MTX or AZA