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汎血球減少 pancytopenia

  • 2024年10月30日
  • 2024年10月30日
  • 血液

原因

非骨髄疾患骨髄疾患
・脾腫:肝硬変・門脈圧亢進症・lymphoma・sarcoidosis
・感染症
・SLE
・DIC(播種性血管内凝固)
・AA(再生不良性貧血)
・MDS(骨髄異形成症候群)
・PNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)
・骨髄の他細胞による置換:白血病・多発性骨髄腫・lymphoma・骨髄線維症・癌骨転移 ・巨赤芽球性貧血 ・HPS(血球貪食症候群)

*薬剤:アロプリノール、抗菌薬(ST合剤など)、抗てんかん発作薬(カルバマゼピン)、抗ヒスタミン薬(シメチジン、ラニチジン、クロルフェニラミン)、抗寄生虫薬(クロロキン)、抗甲状腺薬、リチウム、NSAIDs、D-ペニシラミン、キニジン

再生不良性貧血 (AA: aplastic anemia)

・病態:造血幹細胞自己免疫機序(T細胞が攻撃)による障害→骨髄低形成(汎血球減少 *貧血という名前だが貧血だけではない)・脂肪髄→MRIで確認できる(こちら外部サイト)
*造血幹細胞の障害であり、髄外造血は困難
・治療の種類
 造血幹細胞を刺激する:①TPO受容体作動薬+②蛋白同化ステロイド
 T細胞の攻撃を抑える:①カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン)+②ATG(抗胸腺グロブリン)
・重症度による治療選択
①軽症 Stage1, 2a(輸血不要):シクロスポリン→反応性8週間以内に血球上昇あるか?評価
②重症 Stage2b(定期的輸血必要),3,4,5:40歳未満(20歳未満は絶対)造血幹細胞移植
→移植困難の場合:ATG+シクロスポリン+TPO受容体作動薬(EPAG(エルトロンボパグ)、ロミプロスチム*若年者は長期刺激で白血化のリスクがある)
* ATG再投与は原則禁忌(アナフィラキシーのリスクがあるため)
全ての症例:鉄過剰には鉄キレート療法など対症療法

骨髄異形成症候群 MDS

・病態:造血幹細胞のがん抑制遺伝子の遺伝子異常 異形成≧10%以上
→全ての細胞に異常がある:異形性によるアポトーシス(→血球減少)・機能異常(→不良品なので数だけではなくfunctionも低下する) 好中球が暴走することがある(自己免疫反応)
不良品:*偽Pelger核異常(好中球の分葉障害)、環状鉄芽球(運べない細胞質に鉄が沈着してしまう)、多核赤芽球、微小巨核球
ポイント:無効造血(汎血球減少+機能障害)+前白血病状態(さらなる遺伝子異常により白血病に進展することがある)
・リスク分類と治療:芽球(どのくらい白血病か?)・染色体異常・血球数で点数をつける
①低リスク:対症療法
・ダルベポエチン(EPO200-500mU/mL未満)、レナリドミド(5q-症候群)
②高リスク:白血病への移行を阻止することが目的
同種造血幹細胞移植
・移植困難(高齢など):アザシチジン


発作性夜間ヘモグロビン尿症 PNH: paroxymal nocturnak hemoglobinuria

・病態:造血幹細胞PIG-A遺伝子(後天的であり先天的ではない)→補体制御蛋白(CD55, CD59)の遺伝子の問題→補体活性化制御ができず溶血が生じる+造血障害による汎血球減少
*感染症やアシドーシスなどの誘因がありうる
・症状:溶血性貧血+造血障害+血栓症(静脈だと肝静脈でのBudd-Chiari, 腸間膜静脈血栓症、CVT)
*夜間は呼吸抑制が生理的にかかり、アシドーシスになり補体が活性化し血管内溶血→朝の尿色変化
・検査:直接Coombs試験陰性
・治療:C5モノクローナル抗体エクリズマブ(髄膜炎菌感染症のリスクとワクチンに関してこちら

骨髄線維症 MF: myelofibrosis

・病態:造血幹細胞の増殖→異常クローンからのサイトカイン産生→線維芽細胞の反応性増殖→骨髄の線維化による骨髄置換で造血能低下 *髄外造血あり(骨髄が線維化するため骨髄外で造血が生じる)→脾腫、白赤芽球症 涙滴赤血球

引用元https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AB%E6%A2%A2%E8%A1%80%E5%A1%97%E6%8A%B9%E6%A4%9C%E6%9F%BB#
・原発性:JAK2,CALR,またはMPLの変異 続発性
・検査:貧血・骨髄穿刺はdry tapなので骨髄生検が必要
・治療とリスク評価 生存期間短い
①低リスク~中間Ⅰリスク:①無症状は経過観察+②症状ある場合は対症療法
②中間Ⅱ~高リスク:根本治療は造血幹細胞移植 *移植適応にならない場合:ルキソリチニブ(JAK阻害薬)・対症療法

参考:白赤芽球症 leukoerythroblastosis
・赤芽球と幼若顆粒球が末梢血にある状態
髄外造血:骨髄での何かしらの造血不全→肝臓や脾臓で造血→骨髄は未熟な血球を末梢にださないフィルター機能があるがそれらが肝臓などにはない→赤芽球などが末梢血に流出する
フィルター破壊(癌の骨転移)
骨髄過形成
原因:骨髄増殖性疾患、骨髄癌腫症(フィルター破壊による*癌の骨転移)
*再生不良性貧血はそもそも造血幹細胞が障害されているため、髄外造血もできない

検査

1:採血検査
・血算(白血球分画+血液像+網状赤血球) *特に破砕赤血球の確認
・生化学:AST, ALT, LDH, ALP,γ-GTP, ビリルビン、フェリチン、sIL-2R
・凝固検査
・ビタミンB12、葉酸、銅、セルロプラスミン
・自己抗体:抗核抗体、その他自己抗体(疑う疾患に応じて)
・ウイルス関連 *疑う疾患に応じて提出を検討
 A,B,C型肝炎:HAV-IgM、HBs抗原/抗体、抗HCV抗体
 HIV感染:抗HIV抗体
 パルボウイルスB19感染:パルボウイルスB19-IgM
 EBV感染:EBV-VCA-IgM,IgG, EBNA
 CMV感染:CMV-IgM,IgG
2:腹部エコー検査:肝脾腫の評価目的
3:骨髄検査(吸引・生検) *非骨髄性の原因が明らかな場合は必要なし

参考文献:Am J Clin Pathol  2013;139:9-29