病態についてはこちらを参照ください。AKIについてはこちらをご参照ください。
定義
3か月以上持続する①または②
①腎障害の存在が明らか(尿異常、画像診断、血液、病理)
②GFR<60 mL/min/1.73m2
*シスタチンC:eGFR=(cr + cys)/2 軽度腎障害をみたらシスタチンCでも評価することが重要
*eGFR注意点①体表面積補正の値,②18歳以上の成人が適応,③Cr値が安定した病態でしか使用できない(AKIでは使用できない)
原因
3大原因:高血圧性腎硬化症(元々の名称:腎硬化症)、糖尿病関連腎臓病(DKD: diabetic kidney disease)(元々の名称:糖尿病性腎症)、慢性糸球体腎炎(IgA腎症が最多)
その他:多発性骨髄腫(こちら)、多発性嚢胞腎、アミロイドーシス、薬剤、肥満関連腎症、肝腎症候群
糖尿病関連腎臓病 DKD | 高血圧性腎硬化症 | 慢性糸球体腎炎 | |
原因 | 糖尿病 | 高血圧症 | IgA腎症など |
特徴 | 浮腫・うっ血をきたしやすい 進行が速い | 他の明らかな原因が無い 進行は緩徐 | 糸球体腎炎 |
タンパク尿 | 〇 | ×~△ | 〇 |
血尿 | × | × | ◎ (糸球体性) |
糖尿病関連腎臓病 DKD
・顕性アルブミン尿を伴わずにGFR低下する例もあることから包括的な概念としてのDKDに名称変更(いわゆる糖尿病性腎症は顕性アルブミン尿を伴うことをさすことが多いため)
・病理 メサンギウム器質増加、滲出性病変、結節性病変(Kimmelstiel-Wilson lesion), 糸球体基底膜の肥厚
常染色体優性多発性嚢胞腎 ADPKD
・原因因電子:PKD1遺伝子 80%
・20歳ごろから嚢胞出現、40歳ごろまでに発症、半数以上が60歳ごろまでに腎不全透析管理
・合併症:脳動脈瘤20%, 関嚢胞など
・治療:血圧管理、バソプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン)など
分類
CGA分類:原因疾患 Cause, 腎機能 eGFR, 蛋白またはアルブミン尿 A
ヒートマップ
紹介:G1-2の場合A2血尿陽性は紹介, G3aA1も40歳未満は紹介する、尿たんぱく±2年連続の場合医療機関へ紹介
治療
RAS系阻害薬:タンパク尿があるCKD or DKDで第1選択
・タンパク尿陰性例では十分なエビデンスがない
・CKD G4,5でRAS阻害薬を一律に中止しない
SGLT2阻害薬:DKDにおいて第1選択
・eGFR15未満では新規投与開始しない(継続はよい)
血圧管理
CKD血圧管理 | 蛋白尿– | 蛋白尿+ | |
DM- | DM+ | DM有無関係なし | |
降圧目標 | 140/90mmhg | 130/80mmhg | 130/80mmhg |
降圧薬第1選択 | RAS阻害薬 or CCB or 利尿薬 | RAS阻害薬 |
・利尿薬:CKD G1-3サイアザイド系利尿薬、CKD G4-5 ループ利尿薬
・挙児希望妊娠女性:メチルドパ,ラベタロール,ヒドララジン
・妊娠20週以降:(徐放性)ニフェジピン第1選択
腎性貧血
目標:Hb13g/dL以上を目指さない・下限値10g/dL *EPO濃度の測定は診断に必要ではない
EPO製剤
HIF-PH阻害薬:低酸素上では分解されない→核内で赤血球造血を促す(造血薬) 副作用:中枢性甲状腺機能低下(ロキサデュスタット)
ESA投与し抵抗性ある場合に”2次性”の要因を考える
*鉄欠乏性貧血の診断:透析患者は採血、ダイアライザーへの残血のために年間1g以上Feを失うため鉄欠乏のリスクにある
・Tsat<20% (Tsat=Fe/TIBC)
・Ferritin<100ng/ml
CKD-MBD(Mineral and Bone Disorder:骨・ミネラル代謝異常)
・検査:Ca, P, intact PTH, 25(OH)Vitamin D, ALP・骨密度
・高P血症:食事療法・リン吸着薬 目標:4.5mg/dL未満
・2次性副甲状腺機能亢進症/25(OH)ビタミンD欠乏:活性型ビタミンD製剤、ビタミンDアナログ製剤、カルシミメティクス
代謝性アシドーシス
・治療介入の指標:HCO3-<21 mEq/L
・薬剤:炭酸水素ナトリウム(重曹) 500mg 1日2-3回投与
栄養
・エネルギー:25-35kg/kgBW/日(Stageによらず)
・塩分制限:<6g/日
・蛋白制限:G1-G2 過剰な摂取をしない,G3a 0.8-1.0g/kg標準体重/日, G3b-G5:0.6-0.8g/kg標準体重/日
高K血症
・目標:4.0-5.5mEq/L
・食事療法:G1-G3a制限なし、G3b≦2000mg/day, G4-5≦1500mg/day
*野菜:Kを減らすための対策→茹でこぼす(茹で汁は捨てて,茹でた野菜を摂取する),切った生野菜を水にさらす(電子レンジで加熱するだけでは変化ない)
・イオン交換樹脂
*意図的に飲水量を増量することは必要ない washoutされる訳ではない、再吸収量を少なくしているだけ
*コーヒーは進行抑制効果があるかもしれない
薬剤管理
・腎臓へ悪影響の薬剤(NSAIDs、アミノグリコシドなど)を避ける
・各薬剤の腎機能からの投与量・投与間隔を確認
腎代替療法 RRT: renal replacement therapy
血液透析
・疫学:日本現状全体35万人(HD34万人、PD1万人)
*年々増加している 4万人/年、お亡くなりになる方3万人/年 平均約70歳
・原因疾患:年あたりの導入患者数推移 糖尿病性腎症 40.2%>腎硬化症 18.2%>慢性糸球体腎炎 14.2% 2021年 *糖尿病性腎症は割合としては減少してきている
・eGFR<30 G4:腎代替療法の説明を開始する
腹膜透析 PD: peritoneal dialysis
ポイント:①期間限定の治療、②自尿必要(残腎機能がなくなると血液透析への移行が必要) 日本はPD患者の割合が低い
の欠点
問題点:5-10年くらいで腹膜劣化で困難、定量的に除水困難、保険上は週1回HDと合わせることはできるが、それでも間に合わない場合は週3回のHDへ移行
合併症:①体液管理不良、②PD関連腹膜炎、③EPS(encapsulating peritoneal sclerosis被嚢性腹膜硬化症)腹膜が炎症性の被膜によりおおわれてしまう→腸閉塞 近年ぐっと頻度は減っている
*血糖値は一時的に悪化する(腹膜透析液中の糖分が吸収されるため)が糖尿病が禁忌な訳ではない
*PD関連腹膜炎について
・検査:腹水の培養検査
・治療:抗菌薬治療期間は2-3週間 難治性、再燃性、真菌性は抜去 *ガイドラインは腹腔内投与が推奨されているが、添付文章は認められおらず経静脈投与を行う
*腹膜炎では腹膜透過性亢進により除水不全、コントロール不良の場合はHDへ移行が必要
*混濁が強い場合はカテーテル閉塞予防(ヘパリン)
腹膜透析の中止理由:体液過剰(除水理由)>腹膜炎>透析不全
腎移植
現状:2000人/年(生体腎移植*家族がdonor 約1800人/年、献腎移植 約200人/年)
腎移植のポイント
・免疫抑制剤内服・平均待機期間15年・6親等以内の血族、配偶者など
*血液型違っても可能、高齢者も該当する(年齢だけで非適応にはならない)、透析導入前に腎移植を行う先行的腎移植が予後優れている
*受診から手術まで生体腎移植でも少なくとも3か月から半年が必要
参考文献
・CKD診療ガイド2024