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多発性骨髄腫 multiple myeloma

  • 2024年10月24日
  • 2024年10月24日
  • 血液

形質細胞の悪性腫瘍
年齢:基本的に高齢者の疾患

臨床像

CRAB
Ca(高カルシウム血症):PTH, VitaminDいずれも正常
Renal:腎不全、RTA2型、ネフローゼ症候群
*light chainは通常尿細管で再吸収されるが、閾値を超えると再吸収しきれなくなり尿細管障害を呈する(RTA2型)
Anemia:骨髄浸潤・腎機能障害
Bone lesion:破骨細胞活性化骨融解、圧迫骨折 *「頑固な腰痛」を呈する患者で安易に圧迫骨折としておえると危険なことに臨床上注意

その他
過粘稠症候群 IgM 4g/dl-, IgG 5g/dL-, IgA 7g/dL-の場合
・神経症状:脊髄圧迫、末梢神経障害(ALアミロイドーシス)、中枢神経は稀 *paraproteinによる末梢神経障害についてはこちらのまとめ参照

・3No’s:①発熱なし(悪性腫瘍だが)、②ALP上昇なし(骨病変であるが)、③脾腫なし(血液疾患であるが)

検査・診断

1:M蛋白
・免疫電気泳動:血清免疫固定法,尿中免疫固定法
・免疫グロブリン:IgG, IgA , IgM
・Light chain:尿中Bence-Jones蛋白, κ/λ比

多発性骨髄腫を疑うポイント
・一向に改善しない強い疼痛の腰痛
・TP/Alb解離(最もヒントになります)
・原因不明の腎機能障害、高カルシウム血症、正球性貧血

2:腫瘍細胞 骨髄形質細胞≧10%

3:臓器病変
CRAB(前述)
SLiM基準:形質細胞≧60%(Sixty percent), FLC比≧100(Light chain ratio), MRI≧5mm以上局所性病変(MRI focal lesion)

病期分類

ISS(international staging system):①β2ミクログロブリン、②アルブミン

Revised-ISS:上記ISSに加えて①間期FISH法高リスク染色体異常(CA)の有無 t(4:14), t(14:16), del(17q)、②LDH *新規薬剤出現後から

治療

移植適応:65歳未満、重篤な合併症なし、心肺機能正常

化学療法:MP(melphalan/predonisolone)、プロテアソーム阻害薬(ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ→帯状疱疹予防)、免疫調整(サリドマイド、レナリドミド、ポラリドミド→静脈血栓塞栓症のリスクが最も高いため血栓症予防を検討する)

*血栓症予防に関して 多発性骨髄腫におけるサリドマイド/レナリドミド投与に関連する血栓症予防
・リスク因子がない、あるいは 1 つある場合、アスピリン 81~325mg を 1 日 1 回投与することが推奨される
・リスク因子が 2 つ以上ある場合、LMWH(低分子ヘパリン、エノキサパリン 40mg1 日 1 回に相当)または規定用量のワーファリン投与(INR2~3 を目標)が推奨される
・何らかの骨髄腫治療関連のリスク因子があれば、LMWH(エノキサパリン 40mg1 日 1 回に相当)または規定用量のワーファリン投与(INR2~3 を目標)が推奨される

骨病変:ビスフォスフォネート製剤

MGUS(monoclonal gammmanopathy of undetermined significance)

・病態:MMの前段階 “all myeloma is preceded by MGUS” Harrisonの記載
*50歳- 1%, 75歳- 10%に認める
*1%/年でMMへ移行する
・monocloncal-Ig <3g/dL, 骨髄形質細胞<10% 、臓器障害なし
・無症状、骨病変なし
・治療:なし(経過観察)

原発性マクログロブリン血症 WM: Waldenstrom macroglobunemia

リンパ組織が中心(骨髄腫ではない)・IgM型M蛋白血症
・遺伝子変異:MYD88遺伝子変異 90% > CXCR4遺伝子変異 30%
リンパ節腫大、肝脾腫を伴う点が骨髄腫と異なる(CLLや悪性リンパ腫に似る)
*正球性貧血(連銭形成)、クリオグロブリン血症 10%、寒冷凝集素症 5%
・臨床像:過粘症候群 HVS(hyperviscosity syndrome):視力障害、頭痛など IgM 5g/dL以上の10-30%に認める
*抗MAG抗体関連脱髄性ニューロノパチー(こちら
・治療:症候性が対象 リツキシマブ併用抗腫瘍化学療法(BR:ベンダムスチン, DRC:デキサメタゾン・シクロフォスファミド, BDR:デキサメタゾン・ボルテゾミブ)
*HVSは血漿交換を実施する場合もある(IgMの80%は血管内)