病原体の特徴
アスペルギルス:糸状菌 mold A.fumigatus > flavus> niger> terreus
存在:環境真菌(どこにでも存在している)
感染経路:経気道感染
*Candida(こちら)が内因性(皮膚、腸管)感染症であるのに対してAspergillusは外から体内に病原体が侵入することにより生じる
感染臓器:肺・副鼻腔が代表的→血管侵襲
リスク因子:高度好中球減少、血液腫瘍、造血幹細胞移植
臨床像
分類 | 宿主の免疫状態 | 具体例 |
アレルギー | 正常 | ABPA |
無症候性の定着 | Aspergilloma | |
侵襲性 invasive aspergillosis *局所感染に抑えられず様々な臓器に生じる→血管侵襲→全身へ | 免疫不全 | ・肺、副鼻腔、皮膚アスペルギルス症 ・直接浸潤、血流感染 中枢神経、心血管系 その他の組織 |
眼窩尖端アスペルギルス症:眼窩先端症候群を呈することで鑑別上重要 リスク:高齢者、糖尿病、ステロイド T2WI低信号
慢性空洞性肺アスペルギルス症(CCPA: chronic cavitary pulmonary aspergillosis)
①3か月以上の慢性呼吸器症状または慢性疾患または空洞形成、胸膜肥厚、空洞周囲の浸潤影, fungal ballを伴う画像異常
②抗アスペルギルスIgG抗体上昇またはその他の微生物学的データ異常
③免疫抑制なし
治療:有症状は抗真菌薬治療 *目的:症状改善、喀血現象、肺線維化進行抑制、生存期間延長
ABPA (allergic broncho-pulmonary aspergillosis) アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
・喘息-1%、cystic fibrosis-15%
・検査:抗アスペルギルス免疫グロブリンE抗体、全IgE抗体 *参考:抗アスペルギルスIgG抗体、好酸球増多、皮膚プリックテスト陽性
・治療:ステロイド
Aspergilloma
・慢性肺疾患により生じた空洞に二次性にAspergillusが定着してfungal ball(菌塊)を形成した状態で基本的に無症状
・治療:無症候性の場合は経過観察、有症状の場合は背景や残肺機能を考慮し手術を検討
消化管アスペルギルス症:基本的に造血幹細胞移植後の好中球減少性腸炎(neurtopenic enterocolitis/typhlitis *盲腸部は血流が疎また拡張しやすいので同部位に生じやすい *真菌は細菌より少ないが生じることがありカンジダが94%を占める、アスペルギルスも症例あり)
*MGH case recordで造血幹細胞移植後の症例あり:N Engl J Med 2014;370:1637-46.
検査
アスペルギルスガラクトマンナン(GM)抗原
抗原:細胞壁の主要構成成分の多糖類
検体:血清またはBAL ELISA法で測定
検査特性:侵襲性アスペルギルス感染症の場合 感度71%, 特異度89%
患者背景 | 検体 | Cutt off値 | 感度 % | 特異度 % |
免疫不全1 | 血清 | 0.5 | 78 | 85 |
1.0 | 71 | 90 | ||
1.5 | 63 | 93 | ||
免疫不全2 | BAL | 0.5 | 88 | 81 |
1.0 | 78 | 93 | ||
好中球減少なし3 | 血清 | 0.5 | 37.8 | 87.1 |
BAL | 0.5 | 75.7 | 80.7 | |
1 Cochrane Database Syst Rev 2015;2015:CD007394. 2 Cochrane Database Syst Rev 2019;5:CD012399. 3 J Clin Microbiol 2017;55:2153-61. PMID:28446576 |
・侵襲性アスペルギルス症以外の肺アスペルギルス症は感度低い
・血液腫瘍以外でのGM抗原の有用性に関して感度23.1%, 特異度 76.1% 偽陽性 98.3% Scand J Infect Dis. 2012 Aug;44(8):600-4.
まとめ:検査前確率を意識してGM抗原は解釈する必要がある!
偽陽性:Fusarium, Penicilium, Histoplasma, Blastomyces感染症の交叉反応あり、ピペラシリン・タゾバクタム
β-D-glucan
・こちらにまとめがあるため参照
培養・病理
・BAL, 生検:感度50%程度
*血液培養検査の陽性率は極めて低い
*PCRは定着との区別ができないため特異性が低い
画像
・胸部CT:感度が高く、気管支鏡につながる上で有用
・楔形梗塞巣、好中球減少 halo sign(結節影の周囲を出血によるground glassが囲う)など
*上記の①バイオマーカー(血清・BALのGM抗原、血清β-Dグルカン)、②CT画像検査、③培養・細胞診病理所見を総合的に解釈して診断する必要がある
治療
侵襲性アスペルギルス感染症 第1選択:ボリコナゾール(こちら)
*侵襲性アスペルギルス感染症の治療においてアムホテリシンBとのRCTでボリコナゾールは有意に生存期間延長あり N Engl J Med 2002; 347: 408-415.
*肺外アスペルギルス症の治療は抗真菌薬のみならず、手術など部位に応じた治療が必要になりうる
Fluconazole | Voriconazole | Micafungin | AmphB | |
商品名 | ジフルカン | ブイフェンド | ファンガード | ファンギゾン アンビゾーム |
A.fumigatus | × | ◎ | 〇 | 〇 |
A.niger | × | ◎ | 〇 | 〇 |
A.terreus | × | ◎ | 〇 | × |
A.flavus | × | ◎ | 〇 | 〇 |
侵襲性アスペルギルス感染症の高リスク群での予防投与(長期好中球減少):ポサコナゾール、ボリコナゾール