病態
1:軟骨細胞外のpyrophosphate濃度が上昇しCPP結晶が形成沈着
2:NLRP3 inflammasomeの活性化を通じて炎症を惹起する
リスク因子
・高齢(60歳以上 *最も大きい)、過去の関節外傷(特に半月板損傷)が最も重要
・二次性の原因:副甲状腺機能亢進症、ヘモクロマトーシス、低Mg血症、低P血症
*60歳以下の偽痛風では二次性の原因を考慮して提出:鉄動態(Fe, ferritin, transferrin), Ca, Mg, ALP, iPTH
臨床像
CPPD diseaseは色々な臨床像を含んだ包括的な名称 umbrella termである
急性関節炎 acute CPP-crystal arthritis(痛風に似て偽痛風 pseudogoutと表現される)
・基本的には単関節炎であるが、複数関節が障害されることも多い
・部位:膝(最多)・手関節が多い
・誘因:急性疾患(感染、外傷、術後、入院、低P血症、低Mg血症、CKD stage5、ループ利尿薬、サイアザイド利尿薬、ビスフォスフォネート製剤、化学療法、PPI、H2RA)*引用元:Lancet Rheumatol. 2024 Jul 29:S2665-9913(24)00122-X.
・高齢で認知機能障害などがあると初発症状がなかなかわかりづらいことがある、せん妄を伴うこともある
Crowned dens syndrome
・体幹部の障害の代表的な臨床像・CPPD全体の5%を占める
・回旋制限、頸部痛、髄膜炎に臨床像が似ることがある(髄膜炎は回旋制限ではなく前屈制限)
chronic CPP-crystal inflammatory arthritis
パターン1: 多発関節炎の遷延
・診断難しく他の関節疾患と間違えられる場合ありunderdiagnosisである OA、seronegative RA(同疾患と診断されいる人の中に一定数のpersistent CPP-crystal arthritisが含まれている)、PMRなど
部位:手関節、MCP関節、上腕肩甲関節 *OAで障害されやすい部位
パターン2: 急性関節炎の再燃
*両者は混在しうる
検査
関節穿刺:穿刺でピロリン酸カルシウム結晶を証明することがgold-standard
・化膿性関節炎の合併に注意が必要
・関節液の細胞数はかなり幅がある
・偏光顕微鏡:覚え方“ABC”=allign+blue+CPPD(Z軸に平行で青色はCPP) 見逃しやすい
画像:レントゲン撮影5か所 TFCC(三角線維軟骨複合体)2、恥骨結合1、膝2
*Crowned Dense SyndromeではCT検査を実施する
*関節超音波検査:今回は割愛
治療
・前提条件に根本的にCPP結晶を溶解する治療法は現在ない
・このため炎症をコントロールすることが治療戦略になる→選択肢はステロイド、コルヒチン、NSAIDs
・単関節の場合は関節内ステロイド注射が初手
acute CPP-crystal arthritisの場合
基本は以下3つの中から副作用・合併症併存疾患などを考慮して選択する
①コルヒチン
・0.6-1.2mg/日 治療期間記載なし NEJM reviewの記載
・1.5mg→1.0mg Lancet Rheumatolの記載
②NSAIDs
③ステロイド
参考:高齢者の急性関節炎を呈するCPPDに対する短期間(2日間)のステロイドPSL30mg/日 vs コルヒチン(初日1.5mg, 2日目1.0mg)の治療RCT ”COLCHICORT” Lancet Rheumatol. 2023 Sep;5(9):e523-e531.
→治療効果差はなく、副作用はコルヒチン22%下痢が主体、ステロイド6%高血糖が主体
chronic CPP-crystal arthritisの場合
マネージメント難しい・痛風の様にdisease modifying therapyが存在しないことが問題
①長期低用量コルヒチン:0.5-1.0mg/日
②MTX(?)
→治療反応性がある場合はそのまま継続するが、治療効果反応性に乏しい場合文献上はトシリズマブ、anakinraなど記載がある(管理人:ここは正直専門医と相談になるだろう)
参考文献
N Engl J Med 2016; 374:2575-2584 NEJMのreview
Lancet Rheumatol. 2024 Jul 29:S2665-9913(24)00122-X. doi: 10.1016/S2665-9913(24)00122-X. Epub ahead of print. PMID: 39089298.