関節炎へのapproach総論に関してはこちらをご参照ください。
病態・臨床像
原因菌:黄色ブドウ球菌(最多)>連鎖球菌>グラム陰性桿菌(大腸菌と緑膿菌が多い、リスクは新生児、高齢者、静注麻薬使用者、免疫抑制者)
*若年者の場合淋菌感染も鑑別になる(関節液,血液培養の感度が低く、膣分泌物や尿道分泌物の培養PCRから判断することがある)
部位:膝関節(最多)>股関節>肩関節>足関節>肘関節>手関節 *基本は単関節炎
ポイント:急性の単関節炎は必ず関節穿刺で化膿性関節炎を除外する!
リスク因子:関節の解剖学的異常(関節リウマチを含む)、免疫異常など 以下JAMA. 2007;297:1478-1488より引用
感度 % | 特異度 % | 相対リスク | LR+ | |
年齢>80歳 | 19 | 95 | 4.1 | 3.5 |
糖尿病 | 12 | 96 | 2.8 | 2.7 |
関節リウマチ | 68 | 73 | 25.4 | 2.5 |
直近の関節手術 | 24 | 96 | 8.4 | 6.9 |
人工関節 | 35 | 89 | 4.1 | 3.1 |
皮膚感染 | 32 | 88 | 3.6 | 2.8 |
発熱 | 46 | 31 | NA | 0.67 |
白血球増多 | 90 | 36 | NA | 1.4 |
赤沈上昇 | 95 | 29 | NA | 1.3 |
CRP上昇 | 77 | 53 | NA | 1.6 |
病歴、身体所見、採血検査(炎症反応)のみから化膿性関節炎とそれ以外を区別することは困難である
検査
関節液:3C cell/crystal/culture *培養を最優先する
・培養感度 80-90%, グラム染色感度約50% Br J Rheumatol 1997;36:370-3.
血液培養:50%で陽性となるため必ず提出する
関節液の所見解釈
以下JAMAの”Does This Adult Patient Have Septic Arthritis?”より JAMA. 2007;297:1478-1488
関節液 | 感度 % | 特異度 % | LR+ |
WBC>10万/μL | 29 | 99 | 28.0 |
WBC>5万/μL | 62 | 92 | 7.7 |
WBC>2.5万/μL | 77 | 73 | 2.9 |
多形核球≧90% | 73 | 79 | 3.4 |
糖低下 *血糖比<0.5-0.75 | 51 | 85 | 3.4 |
蛋白>3.0g/dL | 48 | 46 | 0.90 |
LDH>250 U/L | 100 | 51 | 1.9 |
特に白血球数>5万/μLは化膿性関節炎を強く示唆するため注意!
白血球数が増えれば増えるほど化膿性関節炎における特異性が高くなる
関節液から結晶が検出されたとしても、化膿性関節炎の除外にはならない!
文献:結晶が検出される関節液の1.5%(4/265例)で化膿性関節炎合併 J Emerg Med 2007; 32: 23-6.(下図がその4例の詳細)

治療
1:ドレナージ(整形外科コンサルテーション)
2:抗菌薬治療
・化膿性関節炎は10-20%で死亡する緊急性の高い疾患である。グラム染色陰性でも結晶が検出されたからといっても化膿性関節炎は否定できない。化膿性関節炎が否定できない場合は培養結果が出るまで抗菌薬治療を継続する。
・グラム染色GPC:セファゾリン2g q8hr もしくは バンコマイシン1g q12hr(腎機能に応じた投与間隔)
*CQ: 初手は全例バンコマイシンにすべきなのか? バンコマイシンはMRSAリスクに応じて判断
*参考:アメリカ2施設EDではMRSAが最も多い起炎菌(症例数12例と少ない点に注意 MRSA 6, MSSA 4)Ann Emerg Med. 2009;54:695-700.
・グラム染色 GNC:セフトリアキソン2g q24hr *淋菌を想定
・グラム染色GNR:セフタジジム2g q8hr もしくは ピペラシリン/タゾバクタム4.5g q6hrもしくは セフェピム2g q8hr
参考文献
Am Fam Physician. 2011;84(6):653-660.
*調べているとかなり古い文献1990年台などが多い