椎骨動脈狭窄由来の後方循環系脳梗塞に対して再発予防をどうするか?というテーマです。内頚動脈狭窄に比して研究も圧倒的に少なく、エビデンスにも乏しい分野です。
まとめ
1:内科管理が基本
・血管内治療が内科管理よりも再発抑制効果を示したエビデンスは乏しい(内頚動脈狭窄と異なり)
2:外科的介入(血管内治療PTA/ステント、外科的バイパス術)を考慮する状況
・狭窄部位がembolic sourceとなっており再発を繰り返し不安定
・対側の椎骨動脈が狭窄、閉塞している場合 など
→血流動態や血管解剖を含めて総合的に判断する必要がある(脳神経外科と相談)
Systematic review/meta-analysis
Cochrane Database Syst Rev. 2022 May 17;5(5):CD013692.
・結論:短期的、長期的いずれも脳卒中、死亡、TIAそれぞれに関して血管内治療群は内科治療群と有意差なし
血管内治療 VS 内科管理(症候性椎骨動脈狭窄) meta-analysis J Neurol 2017; 264:829–838.
・672例(10個試験)を検討、30日後と1年以降でそれぞれ血管死、全脳卒中、後方循環TIA、後方循環梗塞、脳梗塞全体に関して検討し、いずれも有意差なし
→血管内治療による優位性は指摘できず・大規模な前向き試験が必要という見解
症候性椎骨動脈狭窄に対する血管内治療(ステント留置)の有用性に関して検討 Lancet Neurol 2019; 18: 666–73
・背景:椎骨動脈ステント留置は症候性椎骨動脈狭窄に対して実施されることがあるが、脳卒中再発を減少するかどうかに関しては不明である
・方法:過去のRCT3つのStudyから該当する患者を抽出 354例してステント留置群と内科管理群を比較検討
・結果:頭蓋内狭窄、頭蓋外狭窄、両者を合わせたものいずれにおいても内科管理と比較して、全脳卒中に関して有意差なし
(ステント留置に関して頭蓋内狭窄の方が頭蓋外狭窄と比較して周術期脳卒中リスクが有意に高い)
具体的な臨床研究紹介
CAVATAS trial Stroke. 2007;38:1526-1530.
・症候性椎骨動脈狭窄16例に関するRCT
・有意差はなかったが、16例のみであり解釈難しいため詳細は省略する
症候性椎骨動脈狭窄における血管内治療 vs 内科管理 Vertebral Artery Stenting Trial (VAST) Neurology 2017;89:1229–1236.
・design: RCT(open-label)
・P:症候性椎骨動脈狭窄(≧50%狭窄)182例 *リクルートメントが遅く182例で中断
・I:血管内治療(ステント留置)+内科治療
*頭蓋外 78.7%(周術期合併症なし), 頭蓋内 21.3%(周術期脳梗塞発症2例)
・C:内科治療のみ
・O:脳卒中(致死的 or 非致死的)
5例 VS 12例 HR 0.40 95%CI 0.14-1.13 p=0.08*有意差なし フォローアップ期間 平均3.5年
この件に関しては個人的に信頼している先生方にも色々とご意見を伺いました。お忙しいところ色々ご教授頂き大変ありがとうございました。