病態・特徴
・髄液がくも膜に覆われた嚢胞状の構造物(水風船のような構造)であり良性(画像検査で偶発的に認める場合が多い)
・基本的に無症候性で画像フォローアップも不要
・Seizure,内部への出血,水頭症などを合併して症候性になる場合は外科的治療介入を検討
画像上の特徴
①水信号であり,FLAIR像で低信号(=内部構造がCSF)
②内部に血管構造がない(=くも膜下腔の拡大ではない)
③好発部位:中頭蓋窩(側頭葉先端部,側頭極)・シルヴィウス裂が最多>小脳橋角部、suprasellar arachnoid cyst
*後頭蓋窩の場合はこちらを参照
④圧迫される脳実質皮質(灰白質)が保たれる,周囲の構造は偏移する
⑤圧迫される頭蓋骨が菲薄化(内板のリモデリング),嚢胞の拍動による変化とされている
*大きさは様々.巨大なくも膜嚢胞を認め一見びっくりする場合もあるが、上記特徴をきちんと満たしているか?検討することでくも膜嚢胞かどうかを判断可能である
文献:J Neurosurg. 2013 Feb;118(2):222-31.
・成人48,417例のMRI画像を検討
・くも膜嚢胞1.4%に認める,男性>女性,年齢による差は乏しい
*過去の頭蓋内massのうち1%を占めるという記載はRobinsonが1971年に報告したものに由来しているが間違いである
・部位:中頭蓋窩 34%, 小脳後部 33%, 円蓋部 14%
・中頭蓋窩は左70%(既報も左に多いことが指摘されている)
・無症候性で偶発的な指摘がほとんど
・症候性 5.3% ただ特に非特異的な症状(頭痛など)はくも膜嚢胞との因果関係難しい
・合併症:くも膜下腔または嚢胞内への出血
・フォローアップで不変がほとんど,増大、縮小いずれもあり
・sellar, suprasellarが症候性になりやすい,中頭蓋窩は無症候性が多い