多発性硬化症に対するDMD(disease modifying drugs)として現在最も使用されるようになったgame changerの様な薬剤です。high efficacy therapyとしてのナタリズマブはどうしてもJCVの点で懸念があり使いづらさがありましたが、オファツムマブの登場で一気に代わりました。多発性硬化症の治療全般に関してはこちらを参照ください。
製剤
商品名:ケシンプタ®
製剤:皮下注20mg ペン(皮下注射) 薬価:約23万円/1本(=20mg)
投与方法:初回(0週)、1週後、2週後、4週後、その後20mgを4週間間隔で投与する
機序
CD20モノクローナル抗体(B細胞除去)
*元々慢性リンパ球白血病が適応疾患
*下図は後輩のF先生より許可を頂き拝借させていただきました
*参考:B細胞の成熟分化に関してのまとめ(赤枠で囲った部分がCD20+)
適応
RRMS・疾患活動性を有するSPMS の 再発予防および身体的障害の進行抑制
副作用
・infusion reaction:ステロイド+アセトアミノフェン+抗ヒスタミン薬の前投薬などを行う(必須とされている訳ではない)
*初回に多く、2回目以降は軽減する
*導入は入院必須ではない(外来でも導入可能)
・B型感染チェック必須(HBc抗体)
・PMLはMSに対してのオファツムマブでは現時点で報告なし(慢性リンパ性白血病では報告あり)
モニタリング
・標準的なモニタリングに準じる(リンパ球の定期的なフォローやJCVのフォローなどが義務付けられている訳ではない)
併用禁忌
なし
ワクチン
・生ワクチン(弱毒化生ワクチン):投与しない(使用する場合はオファツムマブ開始4週間までに摂取する)
・不活化ワクチン:効果減弱の可能性がある、オファツムマブ開始後も投与可能
臨床試験: ASCLRPIOSⅠ, Ⅱ N Engl J Med 2020;383:546-57.
・Design:two double-blind, double-dummy, phase 3 trials
・P:RRMS or SPMS(18-55歳), EDSS 0-5.5, 活動性あり(直近1年以内の最低1回再発,直近2年以内の2回再発、直近1年以内の1つ以上のGd造影病変)
exclusion criteria: 過去のDMD使用とwashout期間をクリアしていない
*患者背景:年齢約40歳弱、RRMS95%弱、診断から導入の期間約5.5年、過去にDMDなし約40%、過去のDMD IFN約40%, グラチラマー酢酸塩 約25%、EDSS 約3弱、ARR 1.2前後、1.6年追跡期間
・I: オファツムマブ 20mg 4週間おきに皮下注射 n=946
・C: teriflunomide(pyrimidineを抑制することでB細胞とT細胞の活性を抑制:海外でRRMSに対して認可、日本はなし) n=936
・Outcome
primary outcome
・ARR(annualized relapse rate) 0.11 vs 0.22 , 0.10 vs 0.25 P<0.001
secondary outcome
・3か月後の身体障害度悪化 10.9% vs 15.0% HE0.66 P=0.002
・6か月後の身体障害度悪化 8.1% vs 12.0% HR 0.68 P=0.01
・6か月後の身体障障害度改善 11.0% vs 8.1% HR 1.35 P=0.09 *有意差なし
・MRIGdT1病変数 0.01 vs 0.45, 0.03 vs 0.51 P<0.001
・年間での新規または増大するT2病変 0.72 vs 4.00, 0.64 vs 4.15 P<0.001
・脳体積(萎縮):有意差なし
・注射部位反応 20.2% vs 15.0%(placebo injection)
・重症感染症 2.5% vs 1.8%
*参考文献:各DMDの効果に関してのsystematic review J. Comp. Eff. Res. (2021) 10(6), 495–507
・分類:high efficacy: ARR≧50%低下,moderate efficacy: ARR=30-50%低下 *ABN2015年ガイドライン
・新薬がどれに分類されるかを検討
・オファツムマブはhigh efficacy therapyに分類(下図赤線枠内)
DMTsに関するsystematic reviews Autoimmunity Reviews 2021; 20: 102826.