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Campylobacter fetus

Campylobacter fetusによる髄膜炎のケースプレゼンテーションを目にして、全く知らなかったので勉強しました。

元文献:Clinical Infectious Diseases 2014;58(11):1579 – 86.

基礎知識

Campylobacter jejuni, coliに次いで稀であるが認めるCampylobacter属の菌(GNR)
牛、羊の腸管に存在する
・感染経路:経口感染
・食べ物:牛の特にレバー生(調理不十分),羊
C.jejuniと異なり豚、鶏はsourceと考えられていない
C.fetusの検出(日本からの報告):牛の胆道 45%, 肝臓 5%Int J Food Microbiol 2007; 118:259–63.
*アウトブレークもいくつか報告あり、またMSMとの関連報告もあり

・免疫正常者には感染症を呈することは稀で、免疫不全の背景疾患を有することがほとんど
・背景疾患(62-74%) リスク因子:免疫不全、弁膜症、肝疾患(アルコール性肝硬変)、糖尿病、血管内デバイス *基礎疾患のない高齢者、妊婦もリスク

臨床像

・下痢症のみではく全身感染症を呈する
・Campylobacter属の中では最も菌血症を呈しやすい(Campylobacter属による菌血症の19-53%を占める)
*血管内デバイス感染,動脈瘤感染を呈することも多い
*Campylobacter感染症のうち菌血症になるのは0.15%
C.fetusは他のCampylobacter属と異なりSLR(surface layer protein)を有し、これが血清の殺菌作用から菌を守るため菌血症,血流感染親和性が高いとされている
・髄膜炎、硬膜下膿瘍、脳膿瘍、骨髄炎、肺化膿症、関節炎、子宮感染、血管感染(心内膜炎、血管内デバイス感染、感染性動脈瘤、静脈血栓炎)など
・再発する場合も多い

*Campylobacter fetusによる髄膜炎に関してのliterature review Medicine 2016; 95(8):e2858.
・人獣共通感染症としての髄膜炎はこちらをご参照ください
・患者背景(計22例):年齢48歳、男性73%
・免疫不全73%:アルコール依存 56%、糖尿病 38%、免疫抑制剤 13%、血液腫瘍 6%、脾摘 6%
・感染経路 68%:動物との頻回な接触 38%、牧場勤務 31%、生肉摂取 15%
・臨床像:発熱 91%, 頭痛 64%, 項部硬直 59%, 意識障害 45%, 古典的3徴 18%
・髄液:細胞数577/μL, 蛋白100mg/dL, 糖51.8mg/dL
・培養:血液培養 86%, 髄液培養 77%
・予後:死亡 9%, 神経学的後遺症 10%
・考察と主張:治療反応性に時間がかかるため抗菌薬投与期間を長期にした方が良い,治療は症例数が少ないが成績からは抗菌薬カルバペネム系が推奨

治療

・Campyrobacter fetusに関する臨床試験はない
*Sanford参照
・第1選択:カルバペネム(髄膜炎ではメロペネム2g q8hr ~4-6週間)
・第2選択:アンピシリン、ゲンタマイシン
・マクロライドは使用しない、キノロンは耐性あり感受性を確認してから、第3世代セファロスポリンは10-20%が耐性であり髄膜炎の治療失敗との関連報告あり
・治療期間:決まりなし 非複雑性の菌血症:7-14日