認知症が背景にある高齢女性が施設で数分間呼びかけても反応がないことを繰り返すという主訴で外来紹介受診になりました。施設の方からみると「鼻を毎回こすっている」という症状が気になるということで、最初は全く意味が分からなかったのですが(患者さん本人はこのことを憶えていない)、調べていると“postictal nose-rubbing”という3ページの面白い文献がありました(Neurology 1999;52:743–745)。間欠脳波でてんかん性放電は拾えずまだ何ともわからないのですが、病歴上毎回同じパターンでFIAS(旧:複雑部分発作)の可能性も充分ありそうなのでフォローしていきます。
postictal nose-rubbingに関して
・側頭葉てんかん:右50% (25/50),左42% (21/50)
・前頭葉てんかん:10%(5/50)
・特発性全般てんかん:0% (0/11)
・PNES:0% (0/100)
*考察では側頭葉てんかんでは幻臭など嗅覚に関することが生じるのでその関係か?と推察(本文中”purely speculative”と断った上で)
こする手の左右:側頭葉てんかんの焦点 右同側(右手) 92%,左同側(左手) 86%
*考察では焦点と対側は無視や麻痺が生じるからではないかと推察
ポイント
・”側頭葉てんかん”の約半数で”postictal nose-rubbing”を認める
・発作焦点と”同側”の手で鼻擦りをすることが多く,lateralizing signとして使えるかもしれない
・特発性全般てんかん、PNESでは”postictal nose-rubbing”を認めなかった
・特に鼻すすりは観察者間での情報信頼性も高く評価に有用かもしれない
文献:Neurology 1999;52:743–745.