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抗てんかん薬 治療効果判定

抗てんかん薬の目標は「発作ゼロ」を目指すことです。抗てんかん薬を始めたはいいものの、何をもって「抗てんかん薬の効果がある/なしと判断するか?」という治療効果判定に関して関してまとめていきます。

慢性期(外来患者さん・抗てんかん薬の調整)

■治療効果判定

ポイント1:最も重要な指標は臨床的な「発作」が減少しているかどうか?
・コントロールの指標は「臨床的な発作頻度」>>>「脳波所見」・「抗てんかん薬血中濃度」です。
・抗てんかん薬の血中濃度が例え低くとも発作が臨床的に抑えられているのであれば、抗てんかん薬の血中濃度が例え低くとも血中濃度を指標に増量することはしません。

ポイント2:治療効果判定の「期間」をどのように設定するか?
・抗てんかん薬を導入して「どのくらいの期間発作がなければ”抗てんかん薬の効果あり”と判断してよいのか?」という点を検討します。
・新規の抗てんかん薬による介入をした場合は、”Rule of Three”が参考になります(以下)。

■”Rule of Three”に関して Epilepsia, 53(2):368–376, 2012

・新規治療介入「前」の発作がない(seizure free)期間をAと設定すると、Aの3倍の期間発作がなければ発作減少と判断する指標が”Rule of Three”である
(例)介入前の発作なし期間が2か月の患者さんの場合、新規薬剤開始後2×3=6か月発作がなければ発作減少(効果あり)と判断できる
・事前の発作がない期間によって「これから先1年間の発作出現リスクを見積もる」ことが可能(下図)

急性期(入院患者さんでの抗てんかん薬の調整)

1:前提条件の確認

・基本ですが、まずそもそも「てんかん重積状態」では「てんかん重積」に準じた対応(ベンゾジアゼピン→ホスフェニトイン・レベチラセタムなど→ミダゾラム持続など)が必要です。
抗てんかん薬は「発作の予防」のために用いる薬剤であり、「発作を止める(重積を止める)」薬剤ではないという前提条件を理解する必要があります。

2:入院患者でいつ抗てんかん薬の調整が必要となるか?

・急性期入院中に抗てんかん薬の投与量調整が必要となる状況は例えば「てんかん重積を脱した後の患者さんで時折発作が出現する場合」などです。
・急性期の治療効果判定はもちろん慢性期と同様に臨床的な発作頻度が重要であるが、実際にはNCSEで臨床的にわかりづらい場合が多かったり外来と同じように臨床的な発作が起こってから考えるのでは遅いので、「脳波所見」のフォローが重要です。
・抗てんかん薬は「薬剤の半減期の5倍で定常状態に達する」ためその時期に治療効果判定を心がけるようにします。脳波検査のフォローをする場合もこの時期を意識します。