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てんかんと妊娠

久しぶりの投稿となり申し訳ございません。2022年もどうぞよろしくお願い申し上げます。てんかんと妊娠はとても重要なテーマで調べた内容をガイドラインに基づいたものが基本ですがまとめます。

てんかん発作の頻度は妊娠中変化するのか?

発作頻度:不変約50%、増加約25%、減少約25%→総じると変化なし
*文献により報告さまざま

抗てんかん薬の血中濃度と妊娠の関係

・妊娠中に薬物代謝(特にクリアランス)が変化し血中濃度が変動するため薬物血中濃度測定が望ましい
・LTG:妊娠中(特に妊娠後期)に血中濃度が減少するため注意が必要(clearanceが増大するため)詳しくはこちらに記載があるためご参照ください。
・LEV:妊娠中に血中濃度減少の指摘があり注意(下文献も参照)

■参考:妊娠中の血中濃度の推移 ”Antiepileptic drug clearance and seizure frequency during pregnancy in women with epilepsy” Epilepsy & Behavior 29 (2013) 13–18

単剤治療の場合の薬剤クリアランス
・LTG(非妊娠期と比較して) 第1期:89%増加、第2期:191%増加、第3期:140%増加
・LEV(非妊娠期と比較して) 第1期:98%増加、第2期:207%増加、第3期:97%増加
・その他の薬剤(非妊娠期と比較して) 第1期:11%増加、第2期:12%増加、第3期:19%増加
*下図は各AEDの投与量の推移に関して

抗てんかん薬と先天奇形のリスク

■原則
・可能な限り単剤・必要最少量を目指す(AEDは用量依存性に催奇形性があり, 多剤の方がリスクが高い:特にバルプロ酸、フェニトイン、フェノバルビタール併用)
・妊娠前に葉酸濃度を測定し、低い場合は葉酸の補充(0.4-0.6mg/日)を行う
・薬の種類とリスクの関係は以下の通り

■高リスク:バルプロ酸(二分脊椎)、フェノバルビタール(口唇裂)、フェニトイン(指末端の発育不全*小奇形に関してはこれ以外に薬物特異的なものは指摘なし)、トピラマート(口唇裂)、カルバマゼピン(神経管形成異常)
*バルプロ酸はなるべく使用を避ける・使用する場合は徐放性剤・600mg/日以下を目指す
*これらの薬剤を使用する場合は葉酸併用推奨

■低リスク:レベチラセタム、ラモトリギン

*ペランパネルとラコサミドに関しては現在はまだデータ不十分

*バルプロ酸:児のIQ低下報告があり注意(高用量の場合・下図) 引用元:N Engl J Med. 2009 Apr 16;360(16):1597-605.

*単剤でのmajor congenital malformation/投与量による違い Epilepsia, 56(7):1006–1019, 2015

以下Lancet Neurol 2016; 15: 210–18より

*テーマ:若年女性へのバルプロ酸投与に関して Epilepsia, 56(7):1006–1019, 2015
・十分な患者への協議が必要(リスクと利点に関して)
・他剤(LEVやLTGなど)からの介入をまず検討(JMEやJAEはバルプロ酸が他剤よりも優れていることが証明されておりこの点は考慮)
・万が一使用する場合は極力少量、500-600mg/日を超えないようにする
・避妊を徹底する
・バルプロ酸内服中に妊娠が発覚した場合、他剤への変更は通常推奨されない

分娩方法に関して

通常通り自然分娩で問題なし(通常の出産が可能・自然分娩で問題なし・てんかんのみで帝王切開の適応とはならない)

授乳

授乳は原則問題なし

*出産後は育児、授乳による疲労、睡眠不足といった発作のリスクとなることを避けるように家族でサポートすることが必要

参考文献
・てんかん治療ガイドライン2018
・てんかん専門医ガイドブック