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頸動脈の聴診

頸動脈の聴診は特に神経内科医にとっては基本的な一般身体所見です。もしかしたら色々な流派があるかもしれないので、あくまで参考にしてください。

ポイント1:基本的に聴診器のベル型を使用する

・血管雑音の聴取で注意しないといけない点は、聴診器を強く押し当てすぎてはいけないということです。聴診器を血管に対して強く押し当てると血管狭窄が存在しなくても乱流や狭窄を生んでしまうことで血管雑音を聴取してしまう場合があるということです。
・膜型はきちんと密着させるために強く押し当てる必要がありますが、ベル型は軽く当てます。このため通常はベル型を血管雑音の聴取では使用します。

ポイント2:聴診部位は5か所!
眼球・総頸動脈分岐部・総頸動脈・鎖骨上窩(鎖骨下動脈~椎骨動脈)・心音

・「眼球は頭蓋のメガホン」とも呼ばれており、眼球の聴診はとても重要です。CCF(内頚動脈海綿静脈洞瘻)の診断だけではなく、同側(または対側)のICA狭窄~閉塞を示唆する所見として重要です。聴診上問題になるのが患者さんの無意識な小さな瞬きです。このためまず患者さんに閉眼してもらいベル型をそっと瞼の上から包み込むように当て、患者さんに開眼してもらい一点をみつめてもらう(暗黒の中見上げてもらう)方法が知られています。


・聴診上最も重要なのは「総頸動脈の分岐部」です(同部位の狭窄やプラークが原因でTIAや脳梗塞を来す場合があるため)。総頸動脈の分岐部は皆さんが思っているよりもかなり頭側(乳様突起のすぐ近く)にあり、乳突蜂巣のすぐ近くのところで聴診します。ここが脳梗塞の患者さんで調べる上では最も重要です。


・頸動脈の雑音が実は大動脈弁狭窄症の雑音が放散した可能性があります。このため、かならず心音も確認します。

ポイント3:患者さんの呼吸音を数秒止めてもらう

・聴診してみると分かりますが、頸動脈雑音や眼球の雑音は患者さんの呼吸音がかなり大きくて「聴診しづらい・・・」と感じると思います。
・このためどうしても小さな音を拾うためには患者さんに呼吸を数秒止めてもらう指示をすることが必要です。

参考文献
・サパイラ「身体診察のアートとサイエンス」原著第4版 医学書院
・Neurology 2009;73;e81-e82 orbital bruitを取り上げたfellow向けの記事で短くて分かりやすいです!