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脾腫の診察方法

脾腫の身体所見に関してまとめます。脾臓は後腹膜臓器ではなく、腫大すると外側に沿ってぐるっと前へ広がります(下図の通りCT画像を思い浮かべるとイメージしやすいかもしれません)。脾臓は相当腫大しない限り触れることはできないため(通常触診はできない臓器と考えた方が良い)、代わりに「打診」により診察します。診察上最も重要な解剖がTraube腔であり、ここは通常「鼓音」を呈します。脾臓が外側から前へ広がってくるとTraube腔の外側から濁音になることによって脾腫を診断します。ただ脾腫は明確な大きさの定義がある訳ではなく文献によってはまちまちであり参考所見です。

参考:打診の前提知識

分類英語ピッチ臓器
鼓音tympany高い消化管
共鳴音Resonance中間
濁音Dullness低い実質臓器(肝臓など)

Traube腔の打診

・解剖:Traube’s space(Traube腔)は内縁を第6肋骨肋軟骨接合部、上縁をその接線、外縁を左前腋窩線、下縁を肋骨縁によって形成されたスペースで(第6肋骨~前腋窩線~肋骨縁による三角形とする報告もあります)、本来は胸水貯留の診察目的に利用されていたspaceです(通常は「鼓音」を呈するが胸水貯留により「濁音」を呈する)。
→ただTraube腔の外側後方には脾臓が位置していることから、脾腫により同部位の打診音が変化することから脾腫の診察にも使用されるようになった経緯があります(このためTraube先生は元々脾腫に関してコメントしていません)
・正常の場合:鼓音
・脾腫の場合:濁音

Castell法(打診)

・方法:左前腋窩線上の最下部肋間(通常第8, 9肋間)を呼気と吸気で打診する
・正常の場合:呼気、吸気いずれも鼓音
・脾腫の場合:吸気は濁音、呼気は鼓音 *同部位の濁音は吸気呼気に関係なく脾腫とする報告もある

Nixon法(打診)

方法:患者さんに右側臥位になってもらい、肋骨縁の剣状突起と中腋窩線の中点から、肋骨縁に対して垂直方向に打診を進めていく方法
脾腫の場合:肋骨縁から8cm以上打診で濁音を呈する場合
*かなり煩雑なため筆者は普段行っておりません・・・。

参考:Kehr徴候(ケール徴候)
・急激な脾腫増大や脾破裂では左横隔膜が刺激され、左肩に放散痛を生じる場合があります(自験例は1例のみですが毎回問診するようにはしています)。

参考文献

・サパイラ「身体診察のアートとサイエンス」原著第4版