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ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論 著:千葉 雅也, 山内 朋樹, 読書猿, 瀬下 翔太

この連休中に読んで面白かった本の紹介をさせていただきます。ライティング関係の本は「いかに書くべし」という堅い内容の本が多いですが、この本の面白い点は「書くのって大変だよね・・・」という苦労話や悩みをベースに哲学者さんなどが集まって議論を展開しているところです。この「書くことがつらい・・・」という感覚が切実に伝わってくるため、「プロの方々もつらいんだな・・・」と共感しながら読み進めることが出来ます。前にアウトプットに関して記事(こちらをご参照ください)にまとめさせていただきましたが、その内容にも大いに関係する内容と思います。個人的に印象に残った内容を引用させていただきます(太字が本文からの引用、非太字が私のコメントです)。

「はじめに言っておくと、いまのぼくだってまったくクリアじゃない。頭の中もごちゃごちゃしている。けれどはっきりしているのは、ぼくはむしろ、書くことではじめて考える。書かれたものを見てはじめて物事が見えるようになる。制作だってそうだ。」

「外部化されない思考は堂々巡りを繰り返す。思考は外部化のプロセスではじめて線形化し、繰り上がる。」

この点は本当に自分自身も実感することです。考えがまとまっていない段階でいくら頭だけで考えていても全然内容がまとまらないけれど、一度書き出してみる、まとめてみるという作業を通して客観的にとらるようになると、物事は一気にわかりやすく/扱いやすくなります。漠然とした考えを頭の中だけでこねくり回しても堂々巡りになってしまう場合もありますが、一度紙に書くことで「敵を知る」ではないですが、まず自分が何と向き合っているのかをよく把握できるようになる感覚が確かにあります。

「たとえば「1年前の夏にあなたはなにをしていましたか?」みたいなことから始めて、それについてどう思ったかということを次のステップにして、抽象性を少し上げていくというアプローチは考えられますよね。あまり普段ものを考えずに生きている人、という言い方はよくないかもしれないけれど、じゃあ「普段ものを考えて生きている」ってどういうことかというと、具体性と抽象性のあいだを常に行ったり来たりできているってことなんです。

われわれ学者みたいな人間は、日常で見たことなどに対して、メタレベルの価値判断を常に下して、メタレベルとオブジェクトレベルを行ったり来たりしながら生活している。頭のなかで言語化が常時起こっているから、なにか出しなさいと言われたらそれをそのままワープロにインプットすればいいので、出るんですよね。   それをやっていない人は、まず抽象的なメタレベルの思考をやっていない。具体的な経験すら言語化されていない。でも具体的な経験自体はしているから、それを言語化に繫ぐのは第一歩だと思うし、抽象的なことまでは考えていないけれど感情とか価値については多少考えているから、それを言語化して具体レベルと繫ぐことからかな、と思います。」

「書くこと」と「考えること」の関係性について最も端的に言語化された素晴らしい文章だと思います。「こんなちょっとしたことを書くことに意味があるのかな?」と日常で思ってしまうことがあるかもしれませんが、日常生活での出来事を、どんなに小さなことでも日々言語化することではじめてメタレベル(抽象的な議論のフィールド)と行き来することが出来るということになるということです。やはりどんなに小さな事柄でも何かしらの形でアウトプットを続けることに意義があるのではないかと思います(日記やメモ、SNSなど)。

「アウトプットというのは、自分の身体から発出した時点で、いかなる内容であれ原理的に攻撃の対象になるんですよね。どれほど配慮したものだとしても。だから、なにもアクションを起こしていないかのようなバランスを心がけるのがふつうの生き方だと思うんです。何事かが外に出ている感じだけでも怖く怯えてしまう。書くことは、その怯えをいかに乗り越えるかということです。」

「怯えを隠すための執筆であれば書くことの本質をスポイルしてしまう作用もあるかもしれません。」

書くことに関して非常に勇気づけてくれる文章です。私自身最初アウトプットするときに最も躊躇した点は「批判的なコメントがくるのでは?」ということでした。どうしても書いて世に出すと批判にさらされることになります。しかし、その怯えを乗り越えて初めてアウトプットできるのかもしれません。ただ怯えを隠すための消極的な執筆は自分自身も無意識になってしまっていることがあるため耳が痛いところですが、気を付けないといけないなと日々感じます。つい自己弁護的になるとどうしてもストレートな表現にならずに分かりにくい内容になってしまいがちです。

以上個人的に心に響いた言葉をまとめさせていただきました。書くことについて色々な考えを知ることが出来、個人的にはちょうど自分の中で「書くこと」に関して色々悩んでいたので大変面白く読むことが出来ました。下にAmazonのリンクを掲載しておりますので、興味のある方はおすすめです。