ポイント
1:病態生理による浮腫の分類
2:浮腫の解剖分布
3:pitting edema (fast edema/ slow edema), non-pitting edemaに分類
病態
浮腫に関与する病態”Starlingの法則”
1:血管透過性亢進(炎症・アレルギー)
2:毛細血管圧亢進(体液量増加:心不全・腎不全)
3:膠質浸透圧(アルブミンの喪失:肝硬変・ネフローゼ症候群など)
4:リンパ管排出(リンパ節郭清)
原因(病態ごと)
*浮腫の診察は両側下腿前面を10秒間圧迫し、圧痕が残るか?(pitting or non-pitting)、また圧痕性の場合は元の状態に戻るのが早いか、遅いか?(fast edema or slow edema)を鑑別する。
分布による鑑別
・全身性:低アルブミン血症(肝硬変・低栄養・蛋白漏出・ネフローゼ症候群など)・毛細血管圧上昇(心不全・腎不全・肺高血圧症・収縮性心膜炎)・薬剤性
・片側上肢:蜂窩織炎・静脈ラインの血栓症・リンパ浮腫(乳癌術後)
・片側下肢:蜂窩織炎・深部静脈血栓症・リンパ浮腫(骨盤内腫瘍術後)
・四肢遠位(特に手背):パルボウイルスB19感染症・PMR/RS3PE
・顔面と上半身のみ:上大静脈症候群
・口唇:血管性浮腫
・足 (ankle edema):肺高血圧症を示唆する
*参考:アルブミン値とpit recovery timeの関係について(40秒という基準の元となった文献)
Henry JA, Altmann P. Assessment of hypoproteinaemic oedema: a simple physical sign. Br Med J. 1978 Apr 8;1(6117):890-1. doi: 10.1136/bmj.1.6117.890-a. PMID: 638510; PMCID: PMC1603695.
臨床像
・浮腫を示唆する病歴:「指輪が入らない」、「靴が小さくなった」、「靴下を履くと足に跡がくっきりつく」、「まぶたが重い(顔面の浮腫は眼瞼に最も現れやすい)」
・ベッド上臥床の患者さんでは背部に浮腫を認める。
・体液量が2.5-3L増加すると臨床上浮腫が明らかになる。
・Alb低値単独で浮腫を呈する場合、Alb値は通常2.0g/dLを下回る
・生理的に下肢は左の方が右よりも腫脹する(左総腸骨静脈が右総腸骨動脈による物理的な圧迫を受けるため)。右側下肢の浮腫は常に病的。
検査
・採血:血算・生化学(肝逸脱酵素・腎機能)・BNP・甲状腺機能(TSH, FT4, FT3)
・尿検査(必ずタンパク質定量を行う)
・胸部レントゲン検査
・心エコー検査:右心不全
・下肢静脈エコー検査:深部静脈血栓症疑い
・造影CT検査:SVC症候群などある特定の血管狭窄を疑う場合