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原発性進行性失語 PPA: primary progressive aphasia

原発性進行性失語(PPA: primary progressive aphasia)は「失語症状が前景に立つ(その他の認知機能障害は伴わない)緩徐進行性の変性疾患の総称」です。現在は2011年のGorno-Tempiniらの診断基準が用いられています。

以下の内容はすべて大槻美佳先生の素晴らしい記事「原発性進行性失語の分類と診断」BRAIN and NERVE 72 (6):611-621,2020より引用させていただきました。大槻先生のご講演内容や記事、論文はいつも素晴らしい示唆に富んでおり尊敬しかありません。

分類

原発性進行性失語は以下の3種類に分類します。診断基準はそれぞれが排他的な関係にあります。

ややこしいのは、これと認知症の分類の対応関係です。
・nfvPPA/naPPAとPNFA(progressive non fluent aphasia:進行性非流暢性失語)は対応関係にあり、
・svPPAとSD(semantic dementia:意味性認知症)も対応関係にあります。
*lvPPAは失語症として独立しており、認知症との対応関係には無い点に注意です。

失語の症候と解剖の対応関係

失語(定義):一度獲得された言語の表出、理解が脳損傷により障害された状態
*構音障害とは違う点に注意

文産生障害(失文法)

・病態:文法が乱れ、助詞が欠落したり、単語の順番が乱れます。
・例「昨日カレーライスを食べました」→「カレーライス、食べる、昨日」
・責任病巣:左下前頭回(三角部、弁蓋部:Broca野)

発語失行(失構音)apraxia of speech: AOS

・病態:構音のゆがみ(五十音どれにも該当しないような音)、音の連結障害、抑揚・アクセントの障害が一貫性なく出現する(「流暢性:fluency」はわかりにくい概念であるが、特に発語失行が重要)
・例「ぺんぎん」→「ぺ・・・・んぎ・・ん」 *構音障害は間違い方に一貫性がある点が鑑別点。
・責任病巣:左中心前回中下部

音韻性錯語

・病態:音を間違えてしまう *錯誤=良い間違え
・例「えんぴつ」→「ぺんぴつ」 *「えんぴつ」を「ぺん」と言い間違えるのは語性錯語
・責任病巣:左上側頭回後部~縁上回~中心後回

喚語障害

・病態:単語自体を想起出来ない
・例:「あの、・・・あれ」といった表現が増加したり、考え込んでしまう
・責任病巣:左下前頭回(三角部、弁蓋部:Broca野)~中前頭回、左角回、左下側頭回の後部~前方部

単語の理解障害

・責任病巣:左中前頭回左上~中側頭回

復唱障害

・記憶把持と音韻性錯誤が関与している。
・責任病巣:左上側頭回後部~縁上回~中心後回

これらと上記の進行性原発性失語の対応関係は下図の通り。

失語の診察方法

1:自発話
・病歴聴取時にそのまま確認し、流暢性、発語失行、錯誤の評価を行う
2:物品呼称
*(呼称できない場合)用途を説明してもらう:失認を除外するため
3:聴理解
yes/no question:「私は男ですか?女ですか?」「この部屋に電気はついていますか?いませんか?」「今の季節は夏ですか?冬ですか」
*保続でずっと同じ答えをしてしまう場合があるため、同時に逆の質問を行う。
2段階命令 例:「天井を指さして、床を指さしてください」「鼻を触ったあとに耳を触ってください」
4:復唱
・単語 例:「しんぶんし」「れいぞうこ」
・文章 例:「遠足に行きました」「みんなで力をあわせてつなを引きます」「新しい甘酒を5本のひょうたんに入れなさい」
5:書字
6:読字

参考文献

「失語」に関しては、大槻美佳先生の論文がどれも素晴らしすぎるため、ほとんどそのまま参照させていただく形で申し訳ございません。