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脳梗塞での脂質管理

スタチンによるLDL低下介入の臨床研究のそのほとんどが冠動脈疾患2次予防に対する介入の研究で、脳梗塞に対する2次予防の臨床試験は実は多くありません。ここではこれまで分かっていることを中心にまとめていきます。

結論からまとめると下記の通りです。

今までのstudyをまとめると下記の通りで、ほとんどが1次予防のデータで、2次予防のデータは”SPARCL”が代表です。スタチンによりΔLDL40mg/dL低下するごとに脳卒中再発リスクは約20%程度抑制することが知られています。

問題点は脳出血が増えるかもしれない点です。このmeta-analysisは2009年のもので後述の”Treat Stroke to Target”は含まれていないですが、1次予防では脳出血は有意に増えませんが、2次予防に関しては脳出血が有意に増加する結果でした。この点に関しては、まだcontroversyと思います。

臨床試験

脳梗塞2次予防における脂質管理の代表的な前向き研究は“SPARCL”“Treat Stroke to Target”の2つです。簡単に歴史的経緯を紹介すると、”SPARCL”は2006年NEJMに発表された脳梗塞2次予防においてスタチンが有用である点を示した最初の大規模前向き研究です。その後、冠動脈領域の脂質管理は”Fire and forget”から”Lower the better”に(つまりLDLを下げれば下げるほど良い方針へ)方針転換していきました。脳梗塞2次予防においても”Lower the better”の原則が適応されるのかどうか?を検討するため”Treat Stroke to Target”が2020年NEJMに発表され、LDL70mg/dL以下の厳格な管理が有用である点を示しました。それぞれみていきます。

“SPARCL”

非心原性脳卒中の2次予防としてスタチン(アトルバスタチン80mg/日)群とプラセボ群を比べた2006年NEJMに発表された世界で最初の二重盲検RCTです。スタチン投与群の方が脳卒中合併を有意に抑制した結果で、非心原性脳卒中の2次予防としてスタチンの地位を確立したランドマーク的な臨床研究です。この結果を踏まえてAHA/ASAのガイドラインも変わりました。また様々なサブグループ解析もされています。

問題点としては出血性脳卒中がアトルバスタチン群で増加した点と、投与されたアトルバスタチン80mg/日という量は日本では考えられないほど多い量だという点です(日本のアトルバスタチン添付文書上での最大投与量は40mg/日)。

“Treat Stroke to Target”

これまで脳梗塞患者での2次予防としての脂質管理は”SPARCL”研究しかなかったが、この研究ではLDLの目標値を設定しておらず、”Lower the better”が脳梗塞2次予防にも適応できるかどうかの臨床研究がなかったため実施された研究です。フランスと韓国で脳梗塞もしくはTIA既往の2次予防としてLDL目標値を70mg/dL以下群と90-110mg/dL群に分けて検討しています。

結果は70mg/dL以下群の方がprimary outcomeである複合エンドポイントが8.5%と90-110mg/dL群の10.9%よりも有意に低い(relative risk reduction 22%)結果でした。脳梗塞の2次予防でも厳格なLDL70mg/dL以下を目標とした管理が有用であることが示唆されました。

LDLの推移まとめ

結果

唯一気になる点としてはsubgroup解析で日本人と近いと思われる韓国人の患者さん解析では有意差が出なかった点が挙げられます(下図)。

参考文献

・Lancet Neurol 2009;8:453 脳梗塞での脂質管理をまとめたmeta-analysis。ここには”Treat Stroke to Target”は含まれていないため、今後含まれたmeta-analysisに期待。