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2020年5月

ステロイド骨粗鬆症 Glucocorticoid-induced osteoporosis

ここではステロイド骨粗鬆症に関してテーマを絞って解説します。骨粗鬆症一般に関してはこちらにまとめましたのでご参照ください。 1:機序 ステロイド骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症の原因として最も重要です。機序としてはステロイドによるRNAKL発現亢進・OPG発現減少による破骨細胞の成熟促進と、骨芽細胞・骨細胞のアポトーシス誘導により骨密度が低下します。 ステロイド骨粗鬆症ではまず海綿骨の骨密度が早期に低下し […]

骨粗鬆症 osteoporosis

1:骨代謝の生理 骨代謝は骨芽細胞(osteoblast)による骨形成と、破骨細胞(osteoclast)による骨吸収による平衡関係で成立しています。この関係を調節するホルモンはPTH(parathyroid hormone)です。PTHは破骨細胞に直接作用するのではなく、その手前の段階に作用します。 PTHにより骨芽細胞はRANKL(receptor activator for nuclear […]

尿路感染症 UTI: urinary tract infection

1:分類 ■解剖からの分類 ・腎盂腎炎、急性巣状細菌性腎炎(AFBN: acute focal bacterial nephritis)、腎膿瘍・膀胱炎・尿道炎・男性:前立腺炎、精巣上体炎 「尿路感染症」というのはあくまで総称なので、必ずどの解剖部位の何菌による感染症なのか?をカルテに記載するようにしたいです(例えば「大腸菌による腎盂腎炎」)。総称はARDSとかもそうですが、便利な言葉でついつい使 […]

水代謝の理解へ

1:容量と浸透圧 低Na血症の理解がなぜ難しいかというと、水代謝を評価する際に「容量」と「浸透圧」(正確には水の移動に関係するのは張度:tonicityという概念ですがここでは分かりやすくするために浸透圧:osmolalityで表現します)という2つの概念を同時に評価しないといけない点にあります。低Na血症の完全な理解のために、ここではまず「容量」と「浸透圧」という概念を理解することを目標とします […]

ストレス潰瘍予防 Stress Ulcer Prophylaxis

1:病態 通常胃内はpH=2程度の強酸性で、このままの状態だと組織障害性が高いですが、胃粘膜を保護する粘液を産生することでバランスがとられています。普段胃への血流のうち70~90%が胃粘膜に供給されますが、ICUに入室するような重症患者は循環不全などで胃粘膜への血流不全がおこり、ストレス関連粘膜障害(SRMD: stress-related mucosal damage)が起こるとされています。消 […]

気管切開カニュレ

1:構造 気管切開をされている患者さんは神経内科領域ではALSの患者さんなどかなり多いです。ここでは気管切開カニュレ(チューブ)のの構造と基本的な管理、交換方法に関して解説します。 気管切開の適応ですが、人工呼吸管理が長期化する場合と、呼吸状態は安定していても喀痰の喀出が自分では困難な場合が挙げられます。 適応:長期人工呼吸器管理・上気道狭窄(声帯麻痺など)・喀痰排出困難 ■基本構造 以下の構造が […]

蜂窩織炎 Cellulitis

1:皮膚軟部組織感染症・解剖 皮膚軟部組織感染症ではまずどの深さに感染が起きているか?を知る必要があります。そのためには解剖と病気の対応関係を理解します(下図参照)。皮膚=表皮+真皮、軟部組織=皮下組織+筋肉です。 上図の通り、・表皮:せつ・よう・真皮:丹毒・皮下脂肪織:蜂窩織炎・筋膜以下:壊死性筋膜炎という対応関係にあり、分類することが出来ます。 皮膚軟部組織感染症が疑われる際のpointは以下 […]

関節炎へのアプローチ

1:関節・関節周囲 関節の問題なのか?関節周囲の問題なのか?からまずアプローチします。まずは関節と関節周囲の解剖を解説します。 ・関節:関節軟骨・滑膜・滑液・関節周囲:滑液包・付着部・腱・靭帯・皮膚軟部組織 では関節か?関節周囲の問題か?を区別するにはどうすればよいでしょうか?一般的には以下の点に注目します。 このなかでも私が特に重要と教わったのは、ROMや疼痛の誘発が全方向性か?特定の方向にアク […]

NSAIDs 貼付剤

剤形の違い テープ・パップ 貼付剤にはテープとパップの大きく2種類がありますが、以下の様な特徴・違いがあります。 ■テープ:1日1回の貼付で良い、薄手で粘着力が高いが、皮膚のかぶれといったトラブルが多い。 ■パップ:1日2回の貼付が必要で、厚手で粘着力は低いが、皮膚のかぶれトラブルは少ない。 分類 副作用 ・光線過敏:日光露出部に貼付すると、同部位が光線過敏で湿疹となってしまう場合があります。これ […]

静脈灌流量 Venous Return

静脈灌流量(Venous return)とは、静脈から心臓へ戻ってくる血流量のことです。普段全身の循環動態を考える場合、ついつい左心系に注目してしまいますが、実際には右心系が果たす役割も大きくここで解説します。 1:血流量をどう表現するか? 静脈灌流量を考えるにあたってまずは血行動態の物理的背景をここで解説します。血流量は還流圧差(Δ還流圧)と血管抵抗により決まり、「血流量=Δ還流圧/血管抵抗」と […]