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ビグアナイド系 メトホルミン Metformin

■作用機序

肝臓での糖新生抑制→空腹時血糖の改善、インスリン抵抗性改善の作用機序をもちます。このほかにも脂質代謝異常などへ間接的に影響があるようです。

代謝:腎臓(半減期4時間、24時間後に90%排泄)

■特徴

・経口血糖降下薬の第1選択(禁忌に該当しない限りメトホルミンを使用する)
・心血管合併症を抑制するエビデンスが十分にある
・低血糖のリスクが少ない
・体重増加がないため、肥満患者にも使用することが可能
・薬価が安い

このような理由から基本的には経口血糖降下薬の第1選択として使用するべき薬剤です。経口血糖降下薬を考える場合に重要な点として血糖値は下げるけど、結局大血管合併症を予防する効果が実証されていない薬が多いということです(DPP4阻害薬、グリニド薬、チアゾリジン薬など)。SU薬も大血管合併症予防効果が実証されていますが、やはりメトホルミンの方が低血糖リスクが少ない、体重増加効果がないといった点で優れています。以下の副作用、禁忌にだけ注意しながらまずはメトホルミンで治療しましょう。

■副作用

・乳酸アシドーシス (MALA: metformin-associated lactic acidosis)

重篤な副作用として乳酸アシドーシスが知られています。発生頻度は約3/10万人年、日本では過去50例報告があり、死亡例が10例、死亡例はいずれも禁忌項目もしくは80歳以上への投与例であることから、禁忌事項に該当しなければ安全に使用することが出来る薬剤です。造影剤使用前後2日間も使用を避けます。

・消化管副作用

頻度としては最も多いものです。嘔気、下痢、腹部膨満などがあります。投与開始数日で一過性の場合が多いため、初期投与量は500mg/日と少量から開始します。

ビタミンB12低下

まれで重篤な副作用が乳酸アシドーシス、頻度が多いものが消化管副作用、まれだが知っておくべきなのがビタミンB12欠乏と覚えておくと良いと思います。

■投与量

製剤:メトグルコ® 250mg/1錠 or 500mg/1錠

開始:250mg 2T2x 朝・夕 食前・後どちらでもOK
まずはこの量で消化管副作用がないことを確認します。問題なければ、次は250mg 3T3xもしくは500mg 2T2xへ増量します。途中の維持量は分2, 分3どちらでも大丈夫です。

最大投与量:2250mg/日

腎機能障害の場合:eGFR<30ml/minは投与禁忌 <45ml/minは慎重投与
(高齢者はやはりCCr, eGFRで評価したほうが安全です)
腎機能に応じた最大投与量(以下はJAMA. 2014;312(24):2668より引用)

■投与禁忌

アルコール多飲、呼吸不全、腎不全、肝硬変、脱水、ショックの場合
(つまり、どれも乳酸アシドーシスのリスクが高い状態ということです)

・高齢者での新規開始(76歳以上)
それまでメトホルミンを使用していて、76歳になったから中止する必要はないと思います。腎機能を定期的に評価して、問題ないことを確認すれば安全に使用できると思います。

メトホルミンは長い歴史があり、大血管障害予防効果もそなえた経口血糖降下薬の1st choiceの薬剤です。