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気管切開カニュレ

1:構造

気管切開をされている患者さんは神経内科領域ではALSの患者さんなどかなり多いです。ここでは気管切開カニュレ(チューブ)のの構造と基本的な管理、交換方法に関して解説します。

気管切開の適応ですが、人工呼吸管理が長期化する場合と、呼吸状態は安定していても喀痰の喀出が自分では困難な場合が挙げられます。

適応:長期人工呼吸器管理・上気道狭窄(声帯麻痺など)・喀痰排出困難

■基本構造

以下の構造が基本的な構造です。カフを膨らせ、圧を確認できるパイロットバルーンと、カフ上吸引用のチューブが付いている場合が多いです。

一部重複しますが、気管切開カニュレの構造は以下の点を選択します。

1:単管 or 複管
複管は内筒と外筒があり、内筒のみ交換することが出来ますが内腔が狭いため詰まりやすいです。単管はチューブごと交換する必要があります。(一般的には単管の場合が多いと思います)

2:カフあり or なし
カフありは気管内に分泌物の垂れ込みを防ぐ効果がありますが、嚥下の邪魔になる(食道圧迫、喉頭挙上が重くてしづらい)という欠点もあります。カフなしのものは口腔内分泌物の誤嚥リスクが低い状態で使用します。人工呼吸管理が必要な場合、誤嚥リスクが高い場合は基本的にカフありを選択します。気管切開から離脱できそうな場合は、カフなしにして誤嚥が起きないかどうか確認する方法をとります。

3:側孔あり or なし
側孔は発声可能なものと対応しています。スピーチカニュレでは吸気は通常のものと同じですが、呼気が気切部が一方弁になることで出ず、側孔を通じて声帯を通過し外へ出ることで発声が可能になります。

■サイズの選択

ID:internal diameter(内径) OD:outer diameter(外径)
大きさに厳密には規定はなく、気管切開をしている場合は太くても問題ないとされている。下図の赤矢印部分に記載があります。
参考:ID: 女性:7.5/ 男性:8.0mm

■カフ圧:20~30cmH2O

カフ圧が低すぎると気管内への垂れ込みの原因となってしまい、カフ圧が高すぎると粘膜の血流障害を起こしてしまうため適切なカフ圧を設定します。

2:交換方法

以下の流れで行います。

事前準備
・気切チューブの大きさの確認(上記)
・カフに穴が空いていないか空気を入れて確認・ゼリーを付ける
・口腔内・カフ上・気管内の吸引をしておく

手順
1:カフを抜いて古い気切チューブを抜去
2:挿入
3:内筒を抜く
4:シリンジでカフを膨らませる 
5:きちんと換気出来ているかどか確認

です。このように簡単に交換することが出来ますが、私は人生ではじめて交換したときめちゃくちゃ緊張したことを今でも覚えています・・・。初めて自分でやる場合は上級医に立ち会ってもらった方が安全だと思います。

■交換頻度

決まったものはありません。施設ごとに決めていると思いますが、2週間に1回交換としている施設が多いと思います。

■初回交換は注意

気管切開術後1~2週間はトンネルが安定していないため、チューブ交換時にチューブが皮下に迷入してしまうリスクがあり注意が必要です(この場合はチューブの先が皮下組織なので換気が出来ない)。必ず気管挿管できる準備をしたうえで実施することが大切です(私は初回は複数Dr立ち合いか、気管切開術を実施してもらったDr立ち合いで実施しております)。それ以降は通常トンネルが安定するため、このトラブルは起こりにくいです。

以上気管切開カニュレに関してまとめました。往診などで交換する機会が多いと思いますので一度慣れておくとよいと思います。