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血管奇形まとめ

血管奇形はそれぞれ名称と病態の対応関係がややこしいため、まとめます。

1: AVM (AV malformation:脳動静脈奇形)
2: DAVF (dural AV fistula:硬膜動静脈婁)
3: Carvenous hemangioma:海綿状血管腫
4: DVA (developmental venous anomaly:静脈奇形)

上記4つに分類します。以下にまとめ図を載せます。

AVM (AV malformation:脳動静脈奇形)

毛細血管構造が欠如した脳実質内での動静脈直接吻合(先天性)の状態です。動静脈直接吻合部をnidusと表現し、脳実質内に存在し、流入動脈をfeederと表現し、流出静脈をdrainerと表現します。若年性脳出血の原因として重要です(また高血圧性脳出血の部位と違う場合も考慮する必要がある)。

部位 テント上:85%, テント下:15%
数:98%は孤発性 solitary
mass effect:伴わない場合が多い
大きさ:色々symptomatic 3-6cm 
MRA:”bag of worms” feeder-nidusの一部が描出される
*feederの動脈瘤に注意が必要
*drainerは描出されにくい欠点がある

DAVF (dural AV fistula:硬膜動静脈婁)

硬膜壁での動静脈短絡であり(後天的に形成)、AVMと異なりnidusは存在せず、shunt部が硬膜であることが特徴です。本来は皮質静脈→静脈洞という流れになりますが、それが圧が上昇することで静脈洞→皮質静脈へ逆流することで流出静脈が破綻することでくも膜下出血、脳実質内出血をきたして問題となります(Borden分類で表現します)。

部位としては日本では以下の通りです( わが国における頭蓋内および脊髄硬膜動静脈瘻の疫学的調査  より)
・海綿静脈洞部826例(全体の46%)
・横静脈洞部514例(28%)
・脊髄105例(5,8%)
・上矢状静脈洞部97例(5.3%)
・前頭蓋底部79例(4.3%)
・頭蓋脊椎移行部60例(3.3%)
・テント部58例(3.2%)
・その他76例(4.2%)

Borden分類
TypeⅠ:静脈洞に順行性/逆行性に逆流するもの
TypeⅡ:静脈洞に還流し、逆行性に脳表静脈に還流するもの *これが問題
TypeⅢ:静脈洞に入るがその末梢には灌流せず、脳表静脈に還流するもの or 静脈洞壁から直接、脳表静脈に還流するもの

診断には血管造影検査が必要です。

Carvenous hemangioma:海綿状血管腫

静脈形成異常を反映し(腫瘍ではなし)、sinusoid様の血管腔の集簇で、脳組織は介在しない状態です。それ自体はてんかんの原因とはならず、周囲の微小出血が原因となります。

部位:大脳 90%> 橋>小脳
大きさ:0.5-4cmが多い  *6cm以上の巨大なものもあり(腫瘍と間違える場合もある
出血:-1%/年
画像CT:淡い高信号 *石灰化:半数程度
MRI検査
性状:”pop-corn like”
周囲:hemodidelineによる低信号のrimでふちどられる T2*/T2にて

DVA (developmental venous anomaly:静脈奇形)

静脈の正常変異で、白質の静脈を集める放射状に配列する髄質静脈+1本の太い流出静脈で構成され、静脈還流には異常がない状態です。あくまで正常変異の範疇で、最も多いvascular malformation(剖検例では2.6%)です。症候性(非常にまれ)の場合は合併する海綿状血管腫からの出血の場合が多いとされています。

MRI検査
部位:脳室近傍が多い 第四脳室や側脳室(特に前角近傍) 基本的に単発
形状:1本で直線的*MRAで周囲の動脈に異常血管を認めない点も重要である
T2WI:流れが遅いとflow voidを認めない場合がある *周囲に高信号認める場合もある
合併:海綿状血管腫が合併する場合がある
*出血する際には基本的にCVMを合併している場合が多い 出血 0.15%/year