1:分類まとめ
抗真菌薬は普段そこまで使用頻度が多くなく(血液腫瘍や免疫抑制患者を扱うことが多い先生は慣れていらっしゃるかもしれませんが・・・)、種類が多いため苦手意識を持っている方が多いと思います。
個人的には抗真菌薬はとりあえず下記4つ(フルコナゾール・ボリコナゾール・ミカファンギン・アムホテリシンB)を使用することができれば日常臨床で困ることはまずないのではないかなと思います(下記にまとめ図を載せました)。まずはこの4つを覚えるようにしましょう。
2:各論
■フルコナゾール:FLCZ
フルコナゾールの特徴としては
1:カンジダ感染症で使用する点(C.glabrata, C.kruseiはフルコナゾール耐性が多く注意)
2:組織移行性(眼・中枢神経・尿路)に優れている
の2点が挙げられます。
投与量は
1:loading dose 12mg/kg ( or 800mg)
2:maintenance dose 6mg/kg ( or 400mg)
3:予防 400mg
腎機能障害により調整が必要です(今回取り上げる抗真菌薬で腎機能により用量調節が唯一必要です)。
副作用は肝機能障害が挙げられますが、副作用全体としては比較的少ないです。
相互作用は下記のボリコナゾールと同様に多く、
相互作用注意:ワーファリン、タクロリムス、シクロスポリン、SU剤、スタチン、カルバマゼピン、エリスロマイシン、リファンピシンなどが挙げられます。
■ボリコナゾール:VRCZ
ボリコナゾールの特徴としてはアスペルギルス感染症の第1選択となることが挙げられます。
副作用としては
・肝機能障害があり特に投与から2週間は注意が必要
・投与時に一過的な視野障害・視力障害を生じる場合がありこれは可逆性ですが患者さんに事前に説明しておく必要があります。
*また、腎機能障害がある場合は点滴に含まれるサイクロデキストリンに腎毒性があるため、経口薬のみを用います。
投与量は(腎機能と関係なく)
1:loading dose 点滴の場合:6mg/kg 1日2回 経口の場合:400mg 1日2回
2:maintenance dose 点滴の場合:4mg/kg 1日2回 経口の場合:200mg 1日2回
となります。
TDMが必要で、血中濃度測定(trough値測定)は
・予防:0.5μg/ml以上 ・治療:1-2μg/ml以上 ・中毒域:4-5μg/ml以上
です。
相互作用が多い点が難点(フルコナゾールと同様)で
併用禁忌:リファンピシン、カルバマゼピン
相互作用注意:ワーファリン、SU剤、フェニトイン、ベンゾジアゼピン、スタチン
減量必要:シクロスポリン(1/2に減量)、タクロリムス(1/3に減量)
などが代表的な薬剤です。必ず相互薬を確認しながら処方したいです。
■ミカファンギン:MCFG
ミカファンギンの特徴は
1:カンジダ菌血症の初期治療として使用する
2:抗真菌薬だけど副作用が少なくて使いやすい
という点が挙げられます。基本的にカンジダ菌血症で最初に使う薬剤とざっくり覚えておいてもよいかもしれません。
欠点としては
・組織移行性が悪いこと
・クリプトコッカスには効果がない
・アスペルギルス感染症にも単剤では使用しない
点が挙げられます。
投与量は 100mg q24hrが標準投与量で、腎機能による調節は必要ありません。
■アムホテリシンB:L-AMB
アムホテリシンの特徴は
1:幅広いスペクトラムを持ち(ほとんど全ての真菌に効果がある)重要真菌感染症に効果がある
2:副作用の王様(腎機能障害、電解質異常、infusion reaction)
という点が挙げられます。効果は高いけれど、副作用も大きいという点があります。
私はクリプトコッカス髄膜炎でよく使用する薬剤ですが、個人的印象としても腎機能障害は必発です。腎機能障害はアムホテリシンの投与量と相関しており(輸入細動脈の攣縮による腎前性の機序が考えられています)、尿細管障害による電解質異常(RTA, 低K血症、低Mg血症)があり、週に2-3回は腎機能と電解質を確認しながらフォローします。
lipid formという腎毒性を軽減した製剤を用いることが一般的で、日本ではliposomal amphotericin B(商品名:アムビゾーム®)を使用し使用量は上記をご参照いただければと思います。
希釈や投与時間に注意が必要で、
製剤:50mg/1V (1Vを注射用水12mlに溶解) + 5%ブドウ糖液250mlに溶解
・5%ブドウ糖液以外には混注不可
・投与時間:1-2時間かけて投与する(3時間かけてもよい)
という点に注意が必要です。
3:作用機序
作用機序に関して以下にまとめました。ご参考ください。
以上抗真菌薬に関してまとめました。