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咽頭後間隙 retropharyngeal space

先日頸部痛の患者さんでCT検査でのレポートに「咽頭後間隙に液体貯留あり」と記載がありました。自分で読影したときに全く気が付かず・・・、ここの解剖は苦手でもあるため勉強してまとめました。ほとんどの情報を Am J Roentgenol 2011;96:426 から参照させていただきました(秀逸なreviewです)。

1:解剖

咽頭後間隙の位置を横断像で見ると下図の通りです。

椎体と咽頭、食道の間は3つの間隙(space)に分けられ、
1:true retropharyngeal space(狭義の咽頭後間隙):縦隔には連続しない。
2:danger space:広義の咽頭後間隙ですが、縦隔へ連続しているため、この部位の感染は縦隔炎へ移行する可能性があるため”danger”と直接的な表現をして”true retropharyngeal space”と分けてある。
3:prevertebral space:椎体とprevertebral fasciaの間にあり、椎前筋(頸長筋も)を含んでいる。
となります。下図に矢状断での各間隙をまとめて記載しました。

上図では膜(fascia)と間隙(space)の対応関係がややわかりにくいので、下記に簡略化してまとめます。

正常例では”true retropharyngeal space”と”danger space”を分ける”alar fascia”はCT, MRIいずれでも描出されません。

2:同部位に液体貯留を呈する疾患

咽頭後間隙(retropharyngeal space)に液体貯留を呈する疾患を分類します。おそらく頸部痛の原因検索として画像検査をする過程で見つけることがあると思います。3つに分類することが提唱されており、
1:咽頭後浮腫(retropharyngeal edema):非感染性でリンパ液が溜まってしまった病態。原因として周囲の感染、内頸静脈血栓症、石灰化頸長筋腱炎、放射線治療後などが挙げられます。
2:化膿性咽頭後結節(suppurative retropharyngeal node):感染性で主に小児での反応性リンパ結節で咽後膿瘍の手前の段階です。
3:咽後膿瘍(retropharyngeal abscess):”killer sore throat”の原因としても有名です。
以下にそれぞれの画像上での特徴も含めてまとめました。

以上咽頭後間隙に関して簡単にまとめました。解剖が非常にややこしいですが、鑑別をきちんとして”danger space”に波及し、縦隔炎になる前に、また気道圧迫をする前に治療介入が出来るようにしたいです。