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「けいれん」を呈する病態へのアプローチ

「けいれん」という症候からどのような病態を鑑別しないといけないかを考える。けいれんを呈する病態は大きく分けると1:脳神経細胞の異常興奮2:一過性全脳虚血(失神)3:心因性の3つに分類される。重要なのはこれらの鑑別は検査では分からず、あくまで病歴、臨床所見から行うという点にある。上記3つの病態を一気に鑑別するのは難しいため、まず1と2を比較し、次に1と3を比較するという方法で鑑別をすすめていく。

1:「 脳神経細胞の異常興奮」と「失神」の鑑別

失神は全脳虚血による一過性意識消失であり、これは脳自体の問題ではなく、循環の問題である。失神でも「けいれん」を呈することはよく知られており注意が必要だ。
脳神経細胞の異常興奮による発作との鑑別では、特に舌咬傷は注意が必要で、舌の先ではなく舌の側面に起こる(心因性では舌の先に舌咬傷を生じるとされる)。しっかり挺舌させて、側面までペンライトで確認しないと容易に見逃してしまうため注意が必要だ。
失神かどうかを鑑別するためには、下図のスコアが有名であり、1点以上は「脳由来」(赤字が該当)を示唆し、1点未満は「循環由来」(青字が該当)を示唆する。

2:「脳神経細胞の異常興奮」と「心因性」の鑑別

脳神経細胞の異常興奮による発作の自然経過を知ることが心因性との鑑別に役立つ。通常発作は突然始まり、発作中は開眼状態で、眼球は共同偏視もしくはある1点をにらむようになる。四肢の運動は左右どちらかの場合か両側の場合は左右同期することが多い。
これらの発作は通常2分以内に自然頓挫し、その後10分程度の時間をかけて徐々に意識状態が改善してくる発作中は呼吸が断続的で不安定であることから呼吸性アシドーシスを呈し、筋肉の収縮活動により代謝性アシドーシス(乳酸貯留による)を呈し、混合性アシドーシスとなる場合が多い。そのため発作後は代償的に大きな深い呼吸となり、意識障害が遷延することでの舌根沈下と相まっていびきを呈することが多い。

心因性の場合はこの経過それぞれで違う点があり下図にまとめた。つまり、発作中は心因性の場合は閉眼状態にあり(開眼させようとすると抵抗し、目線をそらす)、四肢の運蔵は断続的、左右一方向性ではなく、左右が交代する場合があり、動きが非同期、時間が2分以上長いということがある。発作後にも呼吸は通常通りであり、いびきもない場合が多い。

これらの点を参考に、心因性との区別には具体的なscoreがある訳ではないが、心因性かどうかを区別していく。