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「けいれん」・「てんかん」・「発作」の言葉について

病態・症候・病名の対応関係

日常臨床で「てんかん」、「けいれん」、「発作」という言葉が十分に区別されずに使用されている現場を目にすることが多い。この言葉を理解するためのポイントは各用語が「疾患」、「症候」、「病態」のどれを表しており、それぞれどのような対応関係にあるかを理解することにある。この対応関係を下図にまとめた。

てんかん(epilepsy)疾患(つまり病気の名前)であり、症候(つまり症状の名前)ではない。てんかんの病態は脳神経細胞の異常興奮に由来する。てんかんの責任部位は脳(つまり低血糖などの全身性の原因ではない)、背景疾患はある場合・ない場合いずれもあり(脳出血後という脳への器質的疾患の既往がある場合もあれば、何もない場合もある)、経過は慢性、症候は非誘発性発作(unprovoked seizure)を呈するものである。長い息で一気に話してしまったがこのひとつひとつの条件を満たすことが必要だ。

発作(seizure)は脳神経細胞の異常興奮に由来する症候の総称である。発作はけいれんのこともあれば、眼球偏移だけのこともあり、あくまで総称である。つまり、全ての発作がけいれんである訳ではない。
発作は1:非誘発性発作(unprovoked seizure)2:急性症候性発作(acute symptomatic seizure)もしくは誘発性発作(provoked seizure)の2つに分けることが出来る。(誘発性発作と急性症候性発作は同義として捉えてよい)。

非誘発性発作という言葉はすこし分かりにくいため捕捉する。非誘発性発作とは明らかな器質的な誘因(例えば脳出血や電解質異常など)がなく、発作を起こすことである。
それとは対照的に、急性症候性発作器質的な誘因があり発作を起こすことである。急性症候性発作の具体的な例としては、皮質下出血患者が発症直後に発作を起こした場合、低Na血症患者が発作を起こした場合などが挙げられる。Epilepsia 2010;51:671
このような器質的な原因は大きく全身性のものと頭蓋内に由来するものに分けられ、下図を参照したい。

けいれん(convulsion)は「具体的な」症候であり、全身の不随意な筋肉の収縮による運動症状を表現する。先の表での対応関係を見ると分かる通り、「けいれん」を呈する患者の全ての病名が「てんかん」であるわけではなく、失神や心因性非てんかん発作でも「けいれん」を呈する場合があるため注意が必要だ。また逆に「てんかん」の発作が全て「けいれん」ではなく、例えば口部自動症のように口をもぐもぐさせるだけの発作の場合もあれば、眼球偏移だけの発作の場合もある。このようにそれぞれの言葉が何を表しているかを理解することがまずは重要だ。