注目キーワード

意識障害 病態・分類

ここでは意識障害を「どう分類すると理解しやすくなるか?」に主眼を置いて考えます。

1:意識障害の分類

意識障害を理解する際、まずは意識を構成する要素を2つに分けると理解しやすくなります。覚醒(arousal)認知内容(content)です。 意識障害の患者を診療するときは、この患者は「覚醒(arousal)の障害か?認知内容(content)の障害か?」を意識するとアプローチしやすくなります。

「覚醒」と「認知内容」といわれても分かりにくいと思うので、「テレビ」に例えて考えてみます。そもそもテレビの電源コードが抜けている状態、この状態が覚醒(arousal)の障害です。テレビの電源が抜けていると、画面は真っ暗でどんな内容かすらわかりません(下図参照)。この「ON」もしくは「OFF」の状態が覚醒しているかどうかを表します。

同様に認知内容(content)についてもテレビの例えで考えてみます。認知内容の障害はテレビでいうと、「画面は映っているが、内容が変な状態」です。具体的には「画面の一部が欠けている」、「配色がおかしい」、「音が変」といった状態です(下図参照)。テレビは起動していますが、内容が変でわからない、理解しにくい状況が認知内容の障害に該当します。

意識障害を考えるときは、まずそもそも電源が抜けていてOFFの「覚醒障害」の状態なのか、それとも電源は入っていてONであるが映り方がおかしい「認知障害」の状態なのかを理解すると分かりやすいです。

次にその神経解剖の対応関係に関して説明します。
「覚醒(arousal)」脳幹網様体(もうようたい)から始まり、視床を経由して両側の大脳皮質へ投射する神経経路から成り立っています。つまり、脳幹網様体の障害、両側視床の障害、両側大脳皮質の障害いずれかで覚醒(arousal)障害が起こります。


逆に言えばそれ以外では覚醒障害は起こりません。例えば、脳梗塞の患者さんで脳幹や両側視床に脳梗塞が起これば覚醒障害が起こりますが、内包後脚(運動をつかさどる錐体路が走行している)の脳梗塞では対応する神経症状(麻痺)が起こるのみであり、意識状態は保たれています。

脳へ障害があれば、全て意識障害になると勘違いしてしまう場合がありますが、そうではありません。あくまで覚醒の神経経路が障害されるときだけ、覚醒障害が起こります

「認知内容(content)」は、神経解剖では「大脳皮質の一部」が担っており、認知内容とそれぞれ対応する大脳皮質の部位があります。その大脳皮質の部位を「何丁目何番地」と住所のように示したのが、Broadman分類です。言語、視空間認知、失行など様々な高次脳機能と解剖学的対応関係にあります(下図はそのうちの一部であり参照)。

2:意識障害と時間の関係

ここまで意識を「覚醒(arousal)」と「認知内容(content)」に分類して考えてきました。ここでは更にそこへ「時間軸」を考えて意識障害を整理していきます。先に述べた覚醒障害か認知障害の軸に加えて、「一過性」、「持続性」の軸を加えて分類します。

・一過性の覚醒障害は「一過性意識消失」に該当し、その中には「失神」や「てんかん発作」が含まれます。
・持続性の覚醒障害は一般的に言われる「意識障害」に該当します。
・一過性の認知内容障害は具体的にはTIAや一過性全健忘などがあります。せん妄は一過性の覚醒障害、認知障害どちらも呈するのでこの中間に位置しています。
・持続性の認知内容障害は「認知症」に該当します。

つい「意識障害」という言葉が便利でどんな患者も「意識障害」と言ってしまうことが多いと思いますが、この大きく4つ(2x2)に分類して、「この患者はどれに該当するのか?」を考えると診療がすすめやすくなります。

3:意識障害の分類 具体例で考える

今までのところをまとめると、まず意識障害を「覚醒(arousal)障害」「認知(content)障害」の2つに分けて考えます。そして、時間軸から「一過性」「持続性」かに分けて考えます。下記に分類表を再度提示します。

具体例1:27歳男性

この患者さんは「一過性」の「覚醒障害」に分類されます。失神やてんかん発作が鑑別に挙げられ、心電図、心エコーなどの検査をすすめていきます。これは持続性の覚醒障害へのアプローチとはかなり異なります。このように分類を間違えると最初のアプローチが全くことなるため注意が必要です。

具体例2:74歳女性

この患者さんは「持続性」の「覚醒障害」に分類されます。これが一般的な「意識障害」と称されるもので、この患者さんは睡眠薬を誤って過量に内服してベンゾジアゼピン中毒での意識障害と判明しました。

症例3:52歳女性

この患者さんは「一過性」の「認知内容の障害」に分類されます。ここで認知内容の具体的などの部位が障害されているか考えると、「記憶」が中心に障害されていることがわかりました。24時間以内に改善し、一過性全健忘が考えられます。

具体例4:91歳男性

この患者さんは「一過性」の「覚醒障害」+「認知内容の障害」に分類され、「せん妄」と考えます。

具体例5:75歳女性

この患者さんは「持続性」の「認知内容の障害」であり、「認知症」と考えます。前向性健忘が主体であり、解剖部位としては「海馬」が推定され、慢性進行性であることから病因としては「変性疾患」が推定されるため、臨床診断としては「アルツハイマー型認知症」が考えられます。

意識障害は分かりにくいとされるテーマですが、少しでも診療の参考になれば幸いです。