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トラネキサム酸 tranexamic acid

  • 2019年1月20日
  • 2020年7月6日
  • 薬剤

商品名:トランサミン®

目的:出血時の止血剤

製剤:静注、内服いずれもあり

*出血のときに「アドトラ」という言葉をよく聞くと思います。「アドナ+トランサミン」の略称で、私が初期研修医の時は最初全く理解できませんでした・・・。。アドナは一般名「カルバゾクロムスルホン酸」である。 

「アドトラ」というと止血剤としてどちらも同等の効果を持つ印象を受けるが、実際にはトラネキサム酸は外傷、産科出血など様々な分野での大規模臨床試験がありその有用性が証明されている薬剤です。その一方、カルバゾクロムスルホン酸(アドナ)は文献も乏しく、使用根拠に乏しいものです。まずはトラネキサム酸の使用法に習熟するのが良いと思います。私はカルバゾクロムスルホン酸は基本的に使用しておりません。

上部消化管出血に対してのトラネキサム酸投与のRCT “HALT-IT” Lancet 2020 Jun 20; 395:1927

消化管出血(上部、下部どちらも)12009人(164病院15カ国)に対してトラネキサム酸24時間投与群(1g loading + 3g continuous)とプラセボ投与群を比較したRCTでは5日以内の死亡は 4% vs 4% (risk ratio [RR] 0·99, 95% CI 0·82–1·18)で有意差なく、逆に静脈塞栓症が有意に増える結果でした((48 [0·8%] of 5952 vs 26 [0·4%] of 5977; RR 1·85; 95% CI 1·15 to 2·98)。この結果を踏まえると消化管出血の止血目的にトラネキサム酸を使用することは勧められません。今まで小規模の結果をまとめたmeta-analysisではトラネキサム酸が有用である可能性が示唆されていましたが、この大規模前向き研究によってある程度の結論が出た形になります。